えっ、完売したらいけない? コンビニの物流がスゴくなった理由:コンビニ探偵! 調査報告書(3/5 ページ)
読者のみなさんは、コンビニに商品が入る時間をご存じだろうか。多くは深夜だが、消費期限の短い弁当やおにぎりなどは1日3回に分けて納品される。実は、これにはいくつかの「思い」があったのだ。
廃棄ロスとチャンスロス
コンビニ側としては、「おいしい弁当を売りたい」という思いがある一方、配送回数を減らしたいという考えもある。ただし、同じ「減らしたい」という考えでも、本部と店舗とでは大きく意味が違う。
本部側は配送コストを下げたいというのが大きな目的だが、店舗側は納品処理のための人件費削減と販売予測の2つの観点からだ。
店舗は、発注の際に販売予測を行う。これが、正確であればあるほどロスが減る。ロスには、売れもしない弁当を発注してしまう「廃棄ロス」と、販売できるはずだった弁当を発注しなかった「チャンスロス」という2つのパターンがある。この2つのロスは表裏一体で、どちらも望まれるものではない。解決策はただ1つ、販売予測の精度アップだ。
では、販売予測の精度を上げるにはどうしたらいいのか。答えは簡単、予測期間を伸ばせばいい。1日の販売数をちまちまと予測するより、1カ月の販売数をトータルで考えるほうが精度が上がるのだ。
弁当発注までの流れを簡単に説明しておこう。例えば、1カ月の弁当販売数を平均して、1日90個だとする。あくまでも平均なので、100個販売する日もあれば80個の日もある。
1日の販売数である90個を3回の納品に分けるのだが、1回の配送分の予測を30個と設定した場合、本部はチャンスロスをなくすために5個増やして発注するように指示する。つまり、30個でいいのに35個注文しないといけないということになる。当初の計算では、1日の弁当販売数は90個前後であったにもかかわらず、3つの便に分けた結果、35個×3回=105個となり、多くの予備を持たなくてはならなくなる。
しかし、1日分をまとめて発注するなら95個、もしくは平均最大値である100個の発注ですむのだ。これが、店舗側が考える納品回数を少なくするメリットだ。
読者の中には、「えっ?! 単純に100を3で割って発注すればいいだけじゃん」と考える 人もいるだろう。確かにその通りで、筆者がコンビニのオーナーをやっているときも、無理に余分な弁当を発注する必要はないと思っていた。
ところが、コンビニ業界でしか通用しない“常識”がある。何かと出しゃばってくる本部のアホ集団スーパーバイザーたちの考えだ。
彼らの考えは「『発注数=販売数』はチャンスロスである」なのだ。実際は、次の納品によって在庫が回復したり、お客さんが来なかったので問題がないという状況であっても、店舗と本部で確認できるコンピュータの示す数値が全てなのだ。そんな彼らは「発注した分は売れているのだから、もっと発注すれば売れますよね」と発注強化を求めてくる。
しかし、発注数を増やしたところで売れるという保証はどこにもない。本部が提唱する根拠のない「チャンスロス理論」を回避するためにも、店舗側としては配送回数を減らすことを切望しているのだ。
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