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なぜ大学のポスターは「世界にはばたき」「未来を拓く」ばかりなのか:こだわりバカ(1/6 ページ)
「ここに集い、世界に旅立つ」「ともに学び、探求し、共に世界を切り拓く大学」――。大学のスローガンは、なぜ手垢がついた表現ばかりなのか。自称「大学コピーコレクター」の川上徹也氏が分析したところ……。
前回は、日本の飲食・食品・製造業界にはびこる「こだわり」という名の妖怪(=手垢にあみれた決まり文句)を扱った。そのような決まり文句は、あってもなくても同じ空気のような存在の言葉だ。だから「空気コピー」と呼ぶことにした。「こだわりの××」というフレーズは現在の日本においてはまさに「空気コピー」だ。何の役割も果たしていない。お客さんの心を1ミリも動かさない。あってもなくて同じ。いやないほうが圧倒的にいい言葉なのだ。それにもかかわらず、日本の多くの飲食店や食品会社は、何も考えずに使いまくっている。まさに「こだわりバカ」状態だ。
「空気コピー」は、何も「食」を扱う業界だけの専売特許ではない。例えば、日本全国各地にある大学のスローガン(※)などもまさに「空気コピー」のオンパレードだ。
※スローガン=コーポレートメッセージ、ブランドステートメント、ブランドプロミス、タグラインなどさまざまな言い方がある。
あなたもきっと、駅などで大学の広告ポスターを見たことがあるはず。しかしそこに何が書かれていたか覚えている人はほとんどいないだろう。なぜなら、大学の広告ポスターの多くは、キャンパスにいる学生の顔の写真と「空気コピー」で構成されているからだ。
そのようなポスターや看板を見かけると、私は思わず写真を撮ってしまう習慣がある。
何を隠そう私は、大学広告界における「空気コピー」のコレクターなのだ。地方に出張に行くと、その土地でしか採集できない大学のポスターに出くわすので思わずにんまりしてしまうくらいだ。
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