なぜ大学のポスターは「世界にはばたき」「未来を拓く」ばかりなのか:こだわりバカ(2/6 ページ)
「ここに集い、世界に旅立つ」「ともに学び、探求し、共に世界を切り拓く大学」――。大学のスローガンは、なぜ手垢がついた表現ばかりなのか。自称「大学コピーコレクター」の川上徹也氏が分析したところ……。
空気コピーとしてスルーされるだけ
そうやってコレクションした大学のスローガンの一部を見てもらおう。(大学全体ではなく一学部のスローガンも混じっています)
「世界へ、そして未来へ」
「日本の未来、世界の舞台へ翔こう!」
「Lead the Way自分、世界、そして未来を拓く」
「世界を知る。世界で学ぶ。世界とつながる」
「多彩な学びとその先の未来へ」
「世界をみつける」
「未来をみつける」
「ここに集い、世界に旅立つ」
「ともに学び、探求し、共に世界を切り拓く大学」
「その先の自分を創る」
「GO GLOBAL! 」
いかがだろう? このフレーズからどこの大学のものか想像つくだろうか? 個々のスローガンの優劣を論じているわけではない。ただこうやって並べてみると、いかに似た言葉が使われていて、それが空気のような言葉になっているかが分かるだろう。
大学のスローガンにおける妖怪(=手垢がついた決まり文句)は「世界」「未来」「学び」「自分」などの名詞と、「はばたく」「拓く」「みつける」「創る」などの動詞の組み合わせたものだ。それで「空気コピー」ができあがる。
極端にいえば、学生やキャンパスの写真にこれらの言葉を組み合わせて構成すれば、大学のポスターは「一丁あがり」だ。しかし、こんなポスター、誰も真剣に見ないし、記憶にもまったく残らない。お金をドブに捨てているのと同じだ(制作している広告代理店や制作会社の実入りにはなっているだろうが)。
それぞれの大学が言おうとしていること自体は間違っているわけではない。どの大学も、学生たちに「世界にはばたいてほしい」と真剣に思っているだろうし、「未来を拓いてほしい」と本気で思っているだろう。
しかし残念ながら、そのような大学側の思いは誰にも伝わらない。空気コピーとしてスルーされるだけだ。
もちろん、毛色の違った言葉を使っているスローガンもあるにはある。しかしどうしても「その大学でなければならない言葉」に出会うことはほとんどない。
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