ショッピングモールが死んでいく:2009年ごろからバタバタと(2/2 ページ)
廃墟と化したデッドモールは全世界共通。子連れの母親や老人たちの暇つぶしの場となり、購買意欲のある若者は少ない。家族と車、前世紀的ライフスタイルに依拠した郊外型モールという業態は、死に向かっている。
崖っぷちの状況
極めて主観的な観察だが、取りあえずうまくいっているモールは、家族より個人客が多い印象。せいぜい母親たちの子連れ、昼間からすることも無さそうな老人夫婦。買って手に持っているものは、妙に少ない。ただ、だらだらぷらぷらと、実店舗でウィンドウショッピング、フードコートで食事。家で過ごす時間、家族でのレジャーが崩れてしまい、かといってテレビやネットにも親しめず、ただの暇つぶし、公園の代わりにモールに転がり込んできている。一方、若い連中は、車もカネも無いせいか、あまり見かけない。
この状況は、かなりの崖っぷち。来場人数が増えても、客単価は伸びまい。若者が来なければ、未来も無い。外国人の免税爆買いを呼び込もうとしているが、彼らは短時間で多品種を買い回れるドンキやマツキヨのような廉価日用品集中店や、超高級ブランドがビル1つに集積している日本独特のデパートを好み、無駄に広大で、長時間滞留型の地元客が多く、半端なプレミアムブランドが主軸のモールとは趣向が相いれない。アイドルやキャラクターを週替わりに投入して集客を図っても、それは一時のドーピングで、モールそのものの日常的吸引力にはつながらない。また、初年度はテナント料の猶予で、各店舗もむちゃなセールができるが、その後、その重みは猶予期間分の追徴も込みとなり、経営に大きくのしかかる。
さして集客力も無いモールに入って高額のテナント料を払い、長期の契約に拘束され、おまけにその客寄せにセールを強いられるくらいなら、土地あまりの時代、自前ででかい駐車場付き郊外型店舗を構えた方が得。その方が、必要と状況に応じてかんたんにスクラップ&ビルト、居抜きの転売もできると考える企業も出てくる。実際、有名ブランドとして相応のプレミアム(原価差益)が稼げるところでないと、大型モールの新規建設と価値維持を分割負担する高額テナント料を払い続けることは難しいのではないか。
要は、リゾートマンション問題やコンビニチェーン問題と同じ。入ってしまったら、一蓮托生(いちれんたくしょう)。それどころか、搾取され続けるだけ。契約を解消して手を引くのも容易ではない。だが実情からすれば、いましばらくはいいにしても、長期トレンドとしては、家族や車という、前世紀的な古いライフスタイルに依拠している郊外型モールは、かつての街中のシャッター商店街と同様、沈没、そして死滅に向かっていっている。(純丘曜彰)
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