鉄道趣味系クラウドファンディング、成功の決め手は?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
クラウドファンディングは小規模な資金調達方法として定着した感がある。しかし、必ず成立するとは限らない。鉄道趣味系の案件から成功例と失敗例を考察した。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
「711系電車」に会ってきた
11月某日、夜行日帰りで北海道を旅した。目的は自分の名前を見届けるためだ。岩見沢駅でレンタカーを借りて約15分。人家も減り、広々とした耕作地域の中にレストラン「大地のテラス」がある。その敷地の外れに赤い電車が2台、保存展示されていた。本コラムの記念すべき第1回「クラウドファンディングで鉄道遺産を守れ!」で紹介した711系電車だ。
711系電車保存プロジェクト「47年間愛されて引退した北海道初の電車『赤電』を残したい!」(関連リンク)は、2015年4月上旬にスタートし、わずか3日間で目標金額の234万円を達成した。私はプロジェクト立ち上げを知ってすぐに参加し、応援しようと思って記事を書いたけれど、書いている最中に成立してしまい、掲載直前に文章の手直しが必要だった。
その思い出の711系電車が、私の目の前に鎮座している。わずかな金額だけど自分もかかわった。実際に見ると達成感がある。感動したら腹が減った。大地のテラスはブラジル式の串焼肉食べ放題「シュラスコ」の店だ。共に訪れた友人と肉をかじりサラダバーを平らげて、改めて電車に近づく。2両のうち1両の乗降扉が開いており、車内を見学できた。ファンド参加者の名前が白いプレートに掲載されていた。私の名前があった。「ナマエヨシ」と電車の運転士さん風に指差喚呼。故郷に帰ってきたような気がした。
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