人工知能を備えた「恋人型ロボット」が売れる!:森永卓郎の“白馬の王子”理論(1/3 ページ)
ロボットと人工知能の組合せによる「第四の産業革命」が起こりつつある。この革命を制する国が世界経済を制すると言われる中、日本に大きな勝機をもたらすであろう新商品があるのだ。
今、ドイツや米国を中心に、「第四の産業革命」というものが提唱されている。
第一の産業革命は蒸気機関、第二の産業革命は電気、第三の産業革命はコンピュータ、そして第四の産業革命がロボットと人工知能の組合せによるものだ。この第四の産業革命を制する国が、これからの世界経済を制するとも言われている。
現在まで続いてきた第三の産業革命は、ME(マイクロエレクトロニクス)革命とも呼ばれ、NC工作機械やマシニングセンタなどのFA(ファクトリーオートメーション)機器、ワープロ、PC、コピー機などのOA(オフィスオートメーション)機器が、生産性の向上に大きな役割を果たした。
ただ、これまでの第三の産業革命では、機器の操作やメンテナンスを行うために、人間が不可欠な存在だった。第四の産業革命では、人工知能を備えたロボットが、工場全体を管理し、指示を出したり、メンテナンスや材料品の供給などを行うことによって、工場から人が消えるような究極の生産性向上がもたらされる。
既にそうした取り組みはドイツだけでなく、日本でも着々と進んでいる。最近の物流倉庫からは、本当に人がいなくなっているのだ。しかし、私が一番気になっていることは、第四の産業革命が、「生産工程への適用」という側面からしか、ほとんど語られていないことだ。
人工知能×ロボットが次々と商品に採用
私は第四の産業革命がもたらす一番大きな効果は、人工知能を備えたロボットが、商品そのものに採り入れられることだと思う。その動きは既に始まっている。10月7日に開幕したIT・エレクトロニクス関連の見本市「CEATEC JAPAN 2015」で、最も盛り上がったテーマは、人工知能とロボットの組み合わせだった。
例えば、セブンドリーマーズが発表したのは、自動洗濯物折りたたみ機「ランドロイド」だ。セブンドリーマーズによると、私たちが生涯で洗濯物の折りたたみに費やす時間は9000時間にも及ぶと言う。単純計算すると、私たちは生涯で1年以上、洗濯物をたたむことに費やしていることになる。
それを機械化できれば自由時間が大幅に増えるのだが、ロボットが洗濯物をたたむのはとても困難な作業だ。洗濯物の形がさまざまで、折りたたみの仕方が一様ではないからだ。セブンドリーマーズは、それを人工知能の活用で克服した。まだ試作機の段階で、発売時期は分からないが、我々が洗濯のすべてから解放される日は近いとみられる。
もう1つの注目商品は、シャープが発表したモバイル型ロボット電話「ロボホン」だ。ロボホンは、シャープが進める「こころプロジェクト」、つまりお友だち家電の象徴となる存在で、高さおよそ20センチの人型ロボットである。ただ、それが携帯電話の機能を兼ね備えているのが特徴的である。
ロボホンには、シャープの人工知能技術である「こころエンジン」が搭載されていて、ユーザーとの対話を積み重ねることで、どんどん進化していくのだ。「立ち上がって」とか「あいさつして」と語りかけると、その通りに動作するほか、目に映る相手の顔も識別して、相手に合わせた行動をとることもできる。
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