PC事業統合は決定的? 見え隠れする東芝、富士通、VAIO各社の思惑:ニュース解説(3/4 ページ)
12月初頭に一部報道のあった東芝、富士通、VAIOのPC事業統合。PC業界に詳しいジャーナリストの大河原克行氏は一連の動向をどう見るか――。
成果は限定的
では、この3社が統合したことにより、どんなメリットが生まれるのだろうか。
実は、その成果は限定的と言わざるを得ない。
PC事業はボリュームを背景にした調達力の高さが、コスト競争力につながる。NECがレノボにPC事業を統合して以降、NECパーソナルコンピュータは、世界ナンバーワンシェアを持つレノボの調達力を生かして、コストを大幅に削減。従来と同じCPU(中央処理装置)、OS、部品を調達することで年間数十億円もの費用を浮かせることができた。それらを開発投資に回すことができたため、「LaVie Z」などのユニークな新製品が世の中に登場することになったとも言えよう。
今回の東芝、富士通、VAIOの統合によって、国内PC市場においては、レノボNECグループを抜き、トップシェアに躍り出ることになるが、規模が縮小傾向にある国内PC市場において、トップシェアを持つことの意味は薄い。
むしろ、富士通の島根、福島の生産拠点、VAIOの安曇野本社という3つの国内生産拠点を持つことは過剰設備であり、それは営業、サポートでも同様だ。国内トップシェアとはいえ、過剰規模というマイナス要素の方が気になる。
一方で、世界に目を転じた際には、レノボの年間5900万台、HPの5700万台、DELLの4200万台という出荷台数に対して、3社が統合した際の規模は約1500万台。その差は歴然であり、コスト競争力では太刀打ちできない。
世界で戦うには規模が小さく、国内で戦うには規模が過剰だという問題に直面する、実に中途半端な状態なのである。事業統合後には大胆なリストラを進めないと経営的に厳しい状況になるのは明らかだ。
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