福島・只見線復旧問題――なぜ降雪地域に鉄道が必要なのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
2011年の豪雨被害で不通になっている只見線について、福島県と地元自治体が「運行再開後の赤字、年間3億円を補てんする意向」と福島民報が報じた。鉄道を維持する利用者が見込めないと分かっていながら、それでも鉄道を残したい。その悲痛な思いはJR東日本と国に届くだろうか。
2011年の豪雨被害からこう着した只見線問題
圧雪路をドライブしながら、JR北海道の減便問題が脳裏をかすめた。そしてもう1つ、不通のままの福島県の只見線を思った。只見線不通区間の金山町に取材した際、私は「道路が整備されても鉄道は必要か」と意地悪な質問をした。雪道のドライブで、やはり必要だと感じた。
2015年12月13日、福島民報電子版は「JR只見線、再開後の赤字補填へ 県と沿線市町村」と題した記事を公開した(関連リンク)。現在、不通となっている会津川口〜只見間について、復旧後の営業赤字分を負担する意向だ。年明けにJR東日本に提案するようだ。この区間の年間の運賃収入は約500万円。これに対して運行経費は約3億3000万円。このほぼ全額を、県と沿線自治体が負担する形だ。ただし、復旧してくれたら、の話である。
只見線の不通区間は、2011年の新潟・福島豪雨で3つの鉄橋が破壊された。自然災害ではあるけれど、人災でもある。洪水の原因は只見川に作られたダムの管理にあった。豪雨によってダムの貯水量が急増し、決壊の危険があったため、やむを得ず放水した。これが豪雨で急増した只見川の水位をさらに激増させた。
ダムが決壊すればもっと被害は大きくなる。この判断は間違っていない。問題は日ごろのダム管理にある。ダム湖底に堆積していく土砂が溜まっていた。この土砂を適切に取り除いていれば、ダムはもう少し耐えられた。もし自治体がダム側に損害賠償訴訟を起こすならば、この瑕疵(かし)を争うことになる。しかしこの4年間、こうした動きはない。ダムの堆積物が、例年の傾向を分析した上で適切に管理されていたとするならば、土砂排出の予定を上回る豪雨だったと言える。ダム側を一方的に責められない。こうして只見線不通区間はこう着状態になった。
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