マツダが構想する老化と戦うクルマ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
今後ますます増加する高齢者の運転を助ける1つの解として「自動運転」が注目を集めている。しかしながら、マツダは自動運転が高齢者を幸せにするとは考えていないようだ。どういうことだろうか?
日本がリードするイノベーションへ
現状では、この音声から解析されたメンタルの状態や分析結果をスマホで表示することにとどまっているが、やがてはこのデータや分析結果が、クルマに搭載された自動運転システムと連携し、クルマの運転で老化防止を図る時代が来るのかもしれない。老化した肉体と精神が、バックアップシステムの助けを借りながら、クルマを上手に動かすという成功体験に刺激され、その結果高齢者が活性化されて老いの速度を緩和できる日が来るのだとしたら、それは素晴らしいことだ。
もちろんその日が来年やって来ることはないが、そう遠くもないらしい。筆者の「まだ発表できるロードマップは何もないんですよね?」という問いに対して、マツダのスタッフは「5年じゃ難しいと思いますが、10年では遅すぎると思います」と答えた。7〜8年というところだろうか?
実は、マツダはこの東京大学との産学協同研究によって、日本がリードする技術イノベーションを起こそうと考えている。工学と医学の融合によって生み出される「クルマの運転による認知機能改善システム」を新たな産業として世界に広めたいという目論見があるのだ。
「自動運転とは究極の安楽システムである」という捉え方よりも、筆者にとってははるかに夢のあるシステムに思える。冷静に判断すれば、現時点ではまだ実現するともしないとも言えない。しかし実現してほしいと思う。微力ながら筆者も社会実装実験に参加することにした。2日ばかり使ってみているが、なかなか面白い。その先に新しい時代のクルマができ上がってくるかもしれないと思えばなおさらだ。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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