高齢化社会の到来で、クルマに必要になる“福祉“の視点とは?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
今後本格的な高齢化社会を迎える日本では、車椅子を積んだり、障害者自身が運転したりできる“福祉車両”の発展が急務になるはずだ。高齢化社会のクオリティオブライフを支える存在として、福祉車両の今後は真剣に考える価値がある重要テーマだ。
自動車メーカー各社は、数年前から福祉車両への取り組みに力を入れ始めている。理由はもちろん、目前に迫りつつある高齢者人口の爆発的増加へ対応するためだ。
各社に対して、行政からの強い要望なども入っているとも聞く。自動車メーカーのようなナショナルブランド企業にとっては、福祉車両への取り組みは社会的使命という側面もあるが、高齢化が急速に進みクルマの販売そのものに影響することへの対処という面も間違いなくある。
われわれ個人にとっても、遠からぬ将来、自分や自分の家族が福祉車両のユーザーになる可能性は十分にある。例えば自分の足で歩くことができなくなった時、自分が自分のお金で購入した自分のクルマで、最低限の制約で移動の自由が確保できることは、クオリティオブライフに大きな影響を与えるだろう。
行政にとっても、体が不自由な人の移動を民間が商業ベースで解決することは極めて重要だ。高齢化社会が進む中、それを税による行政サービスで提供していくだけの予算は国にも自治体にも見込めない。
それを全てメーカーの使命感や善意に任せておいていいわけがない。売れない、儲からない状態で、ただ使命感と善意に頼っていてはひとたび経営状態がおかしくなれば切り捨てられる。資本主義である以上それは仕方ない。しかし、あらゆるサービスの基本は「なくならないこと」である。採算に乗るからこそ、開発と商品化が継続され、利益が出ればより優れた商品が豊富に供給される。それがわれわれの人生の質を左右するかもしれないとなれば、福祉車両のビジネス化はわれわれ自身にとっても極めて重要なことなのだ。
だからこそ、福祉車両の正しいビジネス化をしっかり考えていかなくてはならない。メディアの側もそれを他人事の安易な「弱者救済」の美談で読み解いているばかりではレベルを疑われる。福祉車両の健全で堅牢なビジネス化に向けて、せめて情報発信の役割を担っていくべきなのだ。
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