マツダが「CX-3」で次世代スタンダードを狙う戦略:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/2 ページ)
全車ディーゼルのみという思い切ったラインナップも話題のマツダ「CX-3」。同社が初めてコンパクトSUV市場へ投入する商品である。マツダはどんな戦略でCX-3を投入するのか? 関係者へのインタビューからひもといてみよう。
マツダは2月27日、新型SUV「CX-3」の販売を開始した。CX-3は昨年10月に発売した小型車「デミオ」をベースにしたコンパクトSUVで、マツダとしてはこのジャンルへの商品投入は初となる。
同社の常務執行役員の素利孝久氏によれば、コンパクトSUVのマーケットは2020年に2倍になる可能性があるという。潤沢な資金があるわけではないマツダが、旧来モデルのモデルチェンジではなく、全くの新市場に商品を投入するのはその成長性を見込んでのことだ。
マツダでは、CX-3をSUVの型にはまらないモデルと位置づけ「クロスオーバー」と表現している。単純に聞けば乗用車とRVのクロスオーバーだという意味に取れるが、マツダではこれを「ユーザーライフスタイルのクロスオーバーである」と定義しており、“いかなる用途にも使える”クルマ作りを目指したという。
そのため、従来の小型車にはなかった広々とした足元や、運転の苦手な人にも車両感覚がつかみやすく見晴らしの良い運転ポジションと小回り性能、高過ぎず低すぎず乗降時にシニア層にも負担のかからない600mmのシート高、高さ制限の厳しい旧型の立体パーキングも気にせず利用できる1550mmの全高など、使いやすさを追求することで「次世代のスタンダード」を創出したというのがマツダの主張だ。
ディーゼルのみでグレード展開
CX-3のエンジンは、全車ディーゼルのみという思い切ったラインナップも話題となっている。マツダは2012年に、中型SUVのCX-5に「SKYACTIV-D」と呼ばれる新世代ディーゼルを投入した。従来のディーゼルに比べて軽量で低燃費、環境性能に優れたこのエンジンは好評を博し、CX-5では販売台数の8割がディーゼルエンジン搭載モデルとなった。
続く中型セダン「アテンザ」でも8割がディーゼルエンジン、小型車のデミオではガソリンモデルの最廉価モデル135万円に対し、ディーゼルの最廉価モデルは約42万円高の178.2万円と大きな差額があるにも関わらず販売数の6割がディーゼルモデルとなっている。こうした実績を踏まえ、CX-3はディーゼル一本で勝負をすることにしたのだ。
エコカー用のパワートレーンとしては、ハイブリッドや小排気量ターボなどさまざまなアプローチがあるが、マツダの資金力で複数の方式を車種に合わせて製品化するのは難しい。無理な多方面作戦を展開するよりも、すでにマーケットから高評価を受けているディーゼルに、リソースを“選択と集中”していくという。
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