マツダが「CX-3」で次世代スタンダードを狙う戦略:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/2 ページ)
全車ディーゼルのみという思い切ったラインナップも話題のマツダ「CX-3」。同社が初めてコンパクトSUV市場へ投入する商品である。マツダはどんな戦略でCX-3を投入するのか? 関係者へのインタビューからひもといてみよう。
小規模だからできる、提案型クルマ作り
現在全世界の自動車マーケットにおけるマツダのシェアは3%程度に過ぎず、当面の利益目標はさほど巨大な金額ではない。だから各社が競って製品を投入し、レッドオーシャン化が著しいボリュームゾーンへ打って出て、総力戦に参加する必要はない。むしろ国内他社があまりコマを持たないマーケットで勝負した方が、体力に応じた勝負の仕方ができる。
そのため、競合製品と比較しながらネガティブポイントをリストアップしてつぶしていくやり方ではなく、マツダらしいことを主眼に置いた提案型のクルマ作りを行っていけば、マツダの必要とする販売台数は十分にカバーできるという考え方だ。CX-3は、発売間もないながら、すでに販売目標台数の月販3000台の達成は見えているという。
提案型のクルマ作りをしていくに際し、マツダの主査のひとりは「八方美人のクルマ作りはしない」と言い、別のひとりは「50%の顧客に満足してもらうことができるなら、50%の顧客には嫌われてもいい」と述べていることは興味深い。
世界の自動車販売台数でもっとも大きなボリュームゾーンは、マツダで言えば「アクセラ」のクラスだ。フォルクスワーゲンの「Golf」やトヨタ「プリウス」など強豪がひしめきあう激戦区である。次世代スタンダードというマツダの言い分は、このクラスのリプレースメントとしてCX-3を育てるという意味ではないかと、前出の素利氏に尋ねてみた。「そんなに簡単にはいきませんよ。あのクラスはやっぱり盤石です」
その答えにウソはないかもしれないが、実際に乗ってみると、CX-3には従来の「SUV」という、言わば主流ではない“変わり種モデル”には収まらない普遍性を感じた。マツダの提案する次世代スタンダードが既存の自動車マーケットにどんな影響をあたえるのかに注目して行きたい。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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