試される鉄路、北海道新幹線は「本当はできる子」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」 2016年新春特別編(5/5 ページ)
2016年3月に北海道新幹線が開業する。運営主体のJR北海道にとって、今までの事故、不祥事などの暗い過去から立ち直り、新たな一歩を踏み出すチャンスだ。公開された列車ダイヤと航空ダイヤを比較してみたら、もっと盛り上がっていいと思った。
函館の水族館計画を復活してほしい
道南地域の観光開発にも期待したい。今でも十分な魅力があり、函館山からの夜景も絶品。歴史上の史跡や海産物など味覚の魅力もある。私は生鮮魚介類は苦手だけれど「ねぼっけ」と呼ばれる、函館湾に根付くほっけの塩焼きはうまかった。しかし、こうした既存のものだけに頼らず、新たな観光物件を開発したい。既存施設の改良でもいい。
良い例が旭山動物園だ。2001年と2006年の比較で、ANA、JAL、ADOの羽田〜旭川便の利用率が10%以上の伸びを示し、スカイマークが3往復で参入した。スカイマークは自社の都合で撤退したけれど、航空便全体として増便しているという。JR北海道も「旭山動物園号」を走らせるなど恩恵を受けている。
動物園、水族館は人気があるから、函館湾内を再現した水族館を作るなど魅力ある観光施設が必要だ。津軽海峡という海上交通の要衝であり、海の恵みを得て発展してきた函館市には、意外なことに水族館がない。2000年の「函館アクアコミュニティ構想」、2006年の「海の生態科学館」で計画されたけれど実現に至らなかった。
2014年6月に旧函館ドックで開館した「函館市国際水産・海洋総合研究センター」という産業研究施設に見学スペースと展望台がある程度だ。これは本当にもったいない。東京の「エプソン アクアパーク品川」、京都水族館、江の島水族館、沖縄美ら海水族館などはどれも人気だ。私は生鮮魚介類は食べないけど(くどい)、水族館は好きだ。仕事場には淡水魚のアクアリウムが3本もある。
北海道新幹線は、道南にかかわるすべてのビジネスにとってチャンスだ。まだ景気の良い話が聞こえてこない。しかし繰り返すが、北海道新幹線は本当はできる子だ。出遅れの印象があるけれど、生かそうという動きはあるに違いない。開業後の動きに期待したい。
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