ベースボールの“情報漏洩事件”から見えるスポーツのサイバースパイ:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
2014年、米大リーグで情報漏洩事件が発生し、全米で話題になったことをご存じだろうか。カージナルスの幹部がライバルチームの情報を盗んでいたことが明らかになったわけだが、彼はどのようにしてハッキングを行ない、極秘情報を盗みとったのか。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
もう一昨年前のことになるが、2014年に野球の米大リーグで情報漏洩事件が発生し、全米で話題になった。インターネット上のリーク情報サイトに、ヒューストン・アストロズの選手分析やトレード・スカウト情報など極秘の内部情報が流出した。
当時、アストロズのGMは球団が情報流出の被害に遭っていると公表し、FBI(連邦捜査局)も捜査を開始。そして2015年、ライバルチームであるセントルイス・カージナルスの幹部クリストファー・コレアが、アストロズに対するサイバー攻撃の容疑で逮捕され、大騒動になった。プロの球団職員がライバルチームのシステムに不正侵入し、情報を盗んでいたのである。
日本でも、流出データの中に日本が誇る打者イチロー選手の動向にからむ情報があったことで、一部スポーツ紙などで取り上げられた。
そして、2016年1月8日にコレアは裁判所に出廷し、罪状認否を行った。そこでコレアが罪を認めたことで、米国を中心に今、再びこのニュースが蒸し返されて話題になっている。このケースから分かるのは、近年、世界的に議論されているサイバー攻撃の脅威がスポーツの世界にも波及していることだ。
今回は、コレアがどのようにしてライバルチームへのハッキングを行ない、極秘情報を盗みとったのかを裁判資料から検証してみたい。そこからはカージナルスで起きたような事件は決して私たちにとっても他人事ではなく、また、他のどんなスポーツに起きてもおかしくないという現状が見えてくる。
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