ココイチのカツ横流し事件、産廃業者の「ひとりでやった」が信用できない理由:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
ココイチの「カツ横流し事件」が世間を騒がせている。今回の不正は、産廃業者ダイコーによる“単独犯”ということになっているが、筆者の窪田氏は「『ひとりでやった』というのは信じられない」と指摘している。なぜなら……。
フードロンダリングには複数のパートナーの関与が必要不可欠
先の三笠フーズでもサン商事へ直接、汚染米を送っているわけではなくひとつ業者をかませている。ペーパーカンパニーとの怪しげな取引も行ってくれる気心の知れた業者だ。
食肉の偽装を行ったミートホープは、冷凍食品大手「加ト吉」(現在はテーブルマーク)の賞味期限切れコロッケを「チャンス品」として仕入れ、包装を変えて市場に流していた。この「賞味期限ロンダリング」という「絵」を描いて実行したのは間違いなくミートホープの社長だが、実は加ト吉の工場長も社内の懇親会の費用をプールするため、横流しに関与していたのである。
つまり、フードロンダリングには複数のパートナーの関与が必要不可欠なのだ。産廃業者の社長が、喫茶店で知り合った人物に強引にもちかけた程度で、果たしてできるものなのか、というのが率直な感想だ。
今回、早々に罪を認めたダイコーの大西社長は今やすっかり世間から「廃棄食品を横流しする悪徳産廃業者」というイメージが定着しているが、20年前はちょっと違っている。
1996年6月5日の『朝日新聞』で、ダイコーのグループ企業であり、同じく社長を務めるダイキンが「賞味期限切れ牛乳を再利用して家畜飼料にする工場を建設した」というニュースが掲載されている。
同社は以前、乳業会社の捨てる牛乳の処理を請け負っていた。毎日毎日、大量の廃牛乳が出ることから、社長の大西一幸さんが「なんとか再利用できないものか」と考え、一年ほどかかって製造方法を見つけた。
今でこそ、「廃棄食品を減らそう」「廃棄弁当を飼料化へリサイクル」などは食品会社や外食企業では熱心に取り組んでいるので、珍しい話ではないが、当時はかなり先駆的な取り組みだった。現在、愛知県のブランド豚(三州豚)はエコフィード(廃棄食品を使った飼料)が用いられていることで知られている。つまり、ダイコー社長はいち早く「食のリサイクル」に目をつけた先見性のある経営者だったのだ。
「廃牛乳とはいうものの、腐っているわけではない。栄養分もあり、家畜などには、有効なリサイクル製品になる」
この言葉は大手メーカーにも響いた。ダイコーの主要取引先企業に、錚々(そうそう)たる乳飲料メーカーや牛乳メーカーが並んでいるのはそのためだ。その後、牛乳のみならず廃棄食品のリサイクルに力を入れたことで、壱番屋だけではなく、大手量販企業、大手食品商社、外食産業との取引もできたのだ。
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