競合店ができても、ドトールの売り上げがあっさり元に戻るワケ:ノッている会社は、ここまでやっている!(2/7 ページ)
コーヒー業界が熾烈な競争を極めている。喫茶店、ファミリーレストラン、コーヒーチェーン、コンビニ、サードウェーブなど、さまざまな業界が参入しているが、そんな中で堅調な売り上げを伸ばしているコーヒーチェーンがある。ドトールだ。
本物のコーヒーを、安い価格で
2015年12月末現在、ドトールコーヒーショップは全国に1103店ある。その誕生は1980年。東京・原宿にできた9坪の店は、革命的だった。人々が驚いたのは、その価格設定だ。コーヒー一杯、150円(当時)。これは、周辺のコーヒー価格の半分以下だった。
背景にあったのが、創業者の強烈な理念だ。おいしいコーヒーを、消費者の負担のない価格で提供したい、という思いである。実際、安いコーヒーを提供しようとしたのではない。どうすれば本物のコーヒーを、安い価格で提供できるのかを考えたのだ。
それが9坪の小さな店舗であり、誰でもおいしくコーヒーを淹(い)れられる全自動機の導入であり、フードメニューの充実であり、食器洗浄機の購入だった。原価を積み上げたのではなく、消費者に喜んで飲んでもらえる値段を先に決めて、どうすればそれを実現できるのかを考えたのだ。周辺の喫茶店が、300円、400円のコーヒーを当たり前に出している時代に、一杯150円で成立する店づくりに挑んだのである。
実際、安売りの店ではなかった。コーヒーカップは、一客2300円以上もするボーンチャイナの陶器のカップを使った。スプーンは1本1700円の高級品。コーヒー豆にもこだわった。もともとコーヒー豆の焙煎卸業として創業し、250店ものボランタリーチェーンに成長した「カフェ・コロラド」も生み出していたのが、創業者だった。
消費者は、安さが話題になっている、と入ってみた。こんな値段だから、偽物のコーヒーなんじゃないか、安かろう悪かろうなんじゃないか、と想像していた。ところが、出てきたのは、高級カップに入った本物のコーヒーなのだ。
一号店は、オープンから何日も経たないうちに、1日に数百人が押し寄せる繁盛店になった。二号店、三号店と出店が続いたが、お店の外まで行列ができるようになった。宣伝もしていないのに、開業から数年間は店を取り囲む長い列が途切れなかったという。
ドトールコーヒーはフランチャイズの仕組みを取り入れ、一気に店舗拡大を図っていく。
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