競合店ができても、ドトールの売り上げがあっさり元に戻るワケ:ノッている会社は、ここまでやっている!(4/7 ページ)
コーヒー業界が熾烈な競争を極めている。喫茶店、ファミリーレストラン、コーヒーチェーン、コンビニ、サードウェーブなど、さまざまな業界が参入しているが、そんな中で堅調な売り上げを伸ばしているコーヒーチェーンがある。ドトールだ。
業界の常識を覆す取り組み
おいしい本物のコーヒーを提供したいという思いは、豆選びにとどまらない。コーヒーの味を大きく左右する焙煎のプロセスでも、業界の常識を覆す取り組みをしている。
大量にコーヒー豆を焙煎する世界中の会社が取り入れている手法は、「熱風焙煎」だった。熱風を当てて、一気に豆を焼く。今やコンピュータ制御も取り入れ、効率よくできる。
だが、ドトールが求めた「香り高く、甘みのあるコーヒー」を実現するには、違うやり方があるのではないか、と考えた。それが、「直火焙煎」だった。喫茶店などで、マスターが手作業による「直火で焙煎したコーヒー」を売りにするケースがある。そういう店のコーヒーは、値段が高い。なぜなら手間がかかるからだ。
直火焙煎は、大量生産には向いていないのである。これが世界の常識だった。世界的な焙煎機メーカーにも、相手にしてもらえなかった。
だが、ドトールはあきらめなかった。自分たちで直火焙煎の釜を作ってしまったのだ。そして試行錯誤を繰り返し、直火での大量生産を可能にしてしまったのである。世界初、世界唯一のオリジナルな焙煎方法を取っているのが、ドトールなのだ。
直火焙煎は熱風焙煎の約3倍の時間がかかる。逆にいえば、約3倍の時間をかけて、じっくり焼き上げることができる。この釜が、ドトールの関東、関西の2工場で稼働している。ドトールコーヒーショップのコーヒーは、この直火の釜で焙煎されている。
そして焙煎のこだわりがもうひとつ、ブレンドコーヒーである。ドトールには、求める味がある。その味を作り出すために、複数のコーヒー豆をブレンドする。サンプルで味を確かめ、これだ、と思う味に整えていく。
このブレンドづくりには2つの方法がある。業界で一般的なのは、豆を一種類ずつ焙煎した後にブレンドする方法だ。同じ種類の豆のほうが焙煎しやすく、さらに焙煎した豆のバリエーションが作りやすいから。
しかし、ドトールが採用しているのは、もうひとつの方法、焙煎前にブレンドして一緒に焙煎する方法である。違う種類の豆を焙煎しないといけないため、難しい。だから、業界ではやりたがらない。それでもドトールがこだわるのは、味が違うと考えているからだ。
こんな話を取材で聞いた。炊き込みご飯を作るとき、ご飯を炊いて、後から醤油と具材を入れて混ぜ合わせるのと、最初から一緒に入れて炊きあげたものと、どちらが食べたいか、と。ドトールは、コーヒーも同じだと考えているのだ。
人気のブレンドコーヒーは、こんなところも違うのである。
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