ビックリマンは関西気質? イラストレーターが語るキャラ誕生秘話:一大ブームの仕掛け人たち(2/3 ページ)
1985年の「ビックリマンチョコ 悪魔VS天使シリーズ」発売以来、おまけシールのキャラクターは大阪にあるデザイン会社、グリーンハウスが手掛けている。個性的なキャラたちは一体どのように生まれたのだろうか?
アナログ作業にこだわる理由
筆者は当時まだ30歳すぎと若く、性格もストイックだったので、線画一つをとっても異常なこだわりを持って仕事をしていました。本当に1本1本の線に魂を込めて描いていました。あまりにストイックすぎて、線画に集中しているときは「寄って来るなオーラ」を出していたらしく、スタッフの誰も寄り付きませんでした……。
キャラを線画で描くときはもちろん、キャラの発想をしているときもかなりのめり込んで集中していました。大げさに言うと毎回、自分自身を壊さないと面白いキャラは発想できないのです。これは今も変わりません。そのために、いろいろな物を見たり、音楽で刺激を受けたりしながら自分を追い込みました。
実際、あの太い線画は普通に一筆で描くより数倍の時間がかかります。キャラによって制作時間は変わるので、あくまで目安ですが、通常のキャラで半日〜1日、サイズが大きくて細かいヘッドキャラならば2〜3日はかかっていました。
下絵の線を下書きに、狙いどころに線画をきれいに描かなければなりません。例えば、目の線画は描く部分がちょっとずれるだけで表情が変わります。本番の筆入れは、一筆ごと息を止めて集中しなければ、満足できる線を描けないのです。
仕事でPCを使うようになってからも、このアナログの線画作業は続けています。下書きをスキャンして、PCソフトでパス原稿として描くほうが楽でキレイな線は描けるのかもしれませんが、やはり書き手の「魂」までは描けません。ビックリマンファンの方には、その差は見抜けるはずです。アナログの線画作業は体力が許す限り、続けないとダメだと思っています。
線画が許容範囲の仕上がりでも、線がきれいでなかったり、線の強弱の関係で表情が思い通りにいかなかったりすると、やり直しを求めたこともありました。当時は色塗りもアナログ作業で、アニメのセル画みたいな仕上がりにしていました。フィルムにスミの線画があって、それを裏側から特殊な絵の具で重ね塗りのような作業を繰り返して仕上げるのですが、これも色が思った仕上がりでなければ容赦なくボツにしていました。あまりの過酷な要求に数人会社を辞めていきました。
でも、そのストイックな仕上がりがあったからこそ、ビックリマンシールのキャラクターたちが30年経っても色あせなくて残っているのかもしれません。
関連記事
- なぜ「ビックリマン」は年間4億個を売り上げるまでのブームになったのか?
1980年代後半、日本中の子どもたちの間で爆発的なヒット商品となったのが「ビックリマンチョコ」だ。なぜビックリマンは年間4億個も売れるほど大ヒットしたのだろうか……? - 今、ビックリマンブームが再燃している理由
2000年ごろに到来した2度目のブーム以降、販売が大きく低迷し続けていた「ビックリマンチョコ」。このままこのブランドが忘れ去られてしまうのではという危機感の中、打ち出したアイデアがいかにしてヒットにつながっていったのだろうか。 - 愛されて30周年、なぜ「ビックリマン」はいまだに売れ続けるのか?
1985年にロッテが発売したビックリマンチョコ「悪魔VS天使シリーズ」が今年で30周年を迎えた。その間に紆余曲折があったものの、さまざまな策を講じたことで顧客拡大に成功したのだ。その全貌とは……。 - 11月11日は「ポッキー&プリッツの日」、さて売れ行きは?
11月11日は「ポッキー&プリッツの日」ですが、どのくらい売れたのでしょうか? マーケティングアプリケーションズが運営する家計簿アプリ「レシトク」のデータを分析したところ……。 - 受注を減らしたのに、なぜ「チョコモナカジャンボ」は3倍も売れたのか
森永製菓のアイスクリーム「チョコモナカジャンボ」が売れている。売上高は14年連続で伸びているが、その背景にはどんな“仕掛け”があったのだろうか。同社のマーケティング担当者に話を聞いた。 - なぜ「ココイチ」の味は“普通”なのに、トップを独走しているのか
「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)を運営している壱番屋の業績が好調である。市場をみると、ココイチの店舗数は1000店を超えているのに、2位のゴーゴーカレーは80店ほど。なぜココイチはここまで「独走」しているのか。同社の取締役に聞いたところ……。 - 東京以外にも出店加速 「ギャレット ポップコーン」が大ヒットしたわけ
約2年前に日本で初出店したシカゴのポップコーンチェーン「ギャレット ポップコーン ショップス」は瞬く間に話題となった。今なお“高級ポップコーン”を求めて長蛇の列ができる。日本での運営企業、ジャパンフリトレーの江原社長にビジネス状況などを聞いた。 - 事業拡大に興味なし フレンチフライ専門店「AND THE FRIET」の強烈なこだわりとは?
2013年に都内にオープンしたフレンチフライ専門店「AND THE FRIET」。今でも行列ができるほどの人気だ。今年2月には新たな事業会社を立ち上げ、さらに力を注いでいくという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.