人工知能と外国人に、私たちの仕事は奪われてしまうのか:水曜インタビュー劇場(消える仕事公演)(2/6 ページ)
人工知能によって、自分の仕事が奪われるかもしれない――。そんな不安を感じたことがある人も多いと思うが、実際のところどうなのか。このテーマを調査した、野村総合研究所の担当者に話を聞いた。
同じ「窓口業務」でも結果は真逆
土肥: 次に金融系の仕事について話を聞かせてください。銀行窓口係、貸付係事務員、保険事務員などが人工知能に奪われるかもしれない職業にランクインしています。金融機関といえば「働きたいランキング」で毎年のように上位にランクインしていますし、就職したら「定年まで働ける」と思っている人が多いのではないでしょうか。それなのに、実は仕事がなくなるかもしれない。
寺田: 機械は数字を計算するのが得意。会計、給与、請求書などクラウド上でやりましょ、という企業がどんどん増えているので、今後もこの流れは続くのではないでしょうか。また「ロボ・アドバイザー」と呼ばれる資産管理サービスが増えてきていますし、ITを活用して金融、決済、財務サービスなど行うフィンテックも台頭するはずなので、将来的に金融関連の事務職はどんどん減っていく可能性が高いですね。
土肥: ただ、疑問もあるんですよ。銀行窓口係は奪われるかもしれないのに、旅行会社カウンター係は奪われないかもしれない。両方とも窓口でお客と接する仕事なのに、どうして真逆の結果になったのでしょうか?
寺田: 代替の可能性が低い職業の共通点として「創造性が求められるか、求められないか」を挙げましたが、この部分が大きいのではないでしょうか。旅行会社の窓口で働く人は旅行プランなどを提案しなければいけません。一方、銀行の窓口で働く人は創造性よりもコミュニケーションのほうが求めらている。このようなデータがあったので、分析したしたところ、旅行会社の人は代替されにくい、銀行の人は代替されやすい、という結果になりました。
ただ、銀行の窓口係にもさまざまな仕事がありますので、代替されないかもしれません。一方、ネットの旅行会社がどんどん増えているので、今後、対面による窓口業務がなくなっていくかもしれません。
土肥: 調査結果を見て、銀行の窓口係の人は落胆する必要はないですし、旅行会社の窓口係の人は安心するといった話ではないということですね。
寺田: はい。そのような視点で分析はしていません。例えば、医者は代替されにくい職業のひとつですが、医療の世界にテクノロジーが入ってこないという話でもありません。画像診断などをみると、人の力よりも機械のほうがいいパフォーマンスが出ているんですよね。繰り返しになりますが、医療の現場、旅行代理店の現場にテクノロジーは入ってきませんよ、という話ではありません。
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