フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由:世界を読み解くニュース・サロン(1/6 ページ)
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
フランスで2016年2月初めに「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立したのをご存じだろうか。類を見ない画期的な施策であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。
日本では、愛知県の産業廃棄物処理業が廃棄処分になった冷凍カツを横流ししていた事件がまだ記憶に新しい。そういう背景からも、フランスのニュースは日本でも一部ネットで取り上げられた。
実のところこの法律は、2015年5月の時点で法案としてフランス下院を通過しており、世界では今よりも当時のほうが話題になっていた。日本も同じで、当時ネットを中心にやはり「日本もやるべきだ」といった論調を目にした(ちなみに法案はその後、一旦無効になったが2015年末に復活した)。そして今回、その法案が正式に成立したことで改めてスポットライトが当てられている。
ただ日本で報じられているサラッとした内容ではこの法律の本質は見えてこない。その本質をよく知れば、日本もこの法律を改良して、導入を検討してみればどうかと感じさせられる。
そもそもこの法律は、貧困対策やチャリティーなどを支持する人権派の議員らが中心となって活動し、成立にこぎつけた。フランスのスーパーマーケットは、賞味期限切れ、または賞味期限に近づいている食品を廃棄すること(「食品ロス」と呼ばれる)はできなくなり、その代わりに、普通なら廃棄する食品をボランティア組織やチャリティー団体に寄付することが求められる。現物の寄付を受け取った団体は、貧しい人々のために食品を分配することになる。
比較的多くの廃棄食品が出る大規模店(法律によると400平方メートル以上の店)は必ず、貧困対策を行っているようなチャリティー団体と契約を結ぶ必要がある。さもないと罰則を受けることになり、最大で約8万4000ドル(約970万円)の罰金または最大2年の禁固刑を課される可能性がある。
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