フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由:世界を読み解くニュース・サロン(2/6 ページ)
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。
「食品廃棄禁止法」の波紋
またスーパーマーケット側には、廃棄食品を「破壊」してはいけないという義務も課される。どういうことかというと、これまでスーパーマーケットは、賞味期限切れの食品を人々がゴミ箱から奪っていくのを防ぐために、廃棄処分の食品を意図的に化学薬品などで「破壊」して捨てていた。店側は、廃棄食品を拾って食べることで腐った食品を口にしてしまうこともあるとして食べられないように「破壊」していると主張していた。
だがそれは表向きの理由であり、現実には廃棄処分の食品を拾われたら商売あがったりだと考えた店側の対応策だと言われている。ゆえに、フランス政府は破壊を違法にし、再分配するよう規定した。
今フランスでは年間710万トンの食料が廃棄処分されている。その内訳は、67%が一般から、15%はレストランから、そして11%はスーパーマーケットなどから廃棄される。チャリティー関係者らによれば、寄付される食料が15%増加すれば、年間1000万食を追加で提供できるという。スーパーマーケットからの寄付が増えればそれだけ提供できる食品も必然的に増える。
いいことづくめの話に見えるが、もちろん課題も多い。
この法律によれば、慈善団体などと契約を交わさないことで罰則が適応されるのは、大店(400平方メートル以上の店)のみであり、中小規模のスーパーマーケットにその義務はない。というのも、個々の店による食品ロスが比較的少ないということもあるが、財政的にも体力の劣ることが多い中小規模の店にはこの法律は大きな負担となるからだ。例えば廃棄処分の食料を仕分けし、無償で提供するのにはさらなる時間と労力が必要になる。
この点についてフランスの商業流通連盟は、「この法律はターゲットも目的も間違っている。大手の店が出すのは廃棄食品全体のたった5%に過ぎない」と、今回の法律を痛烈に批判している。さらに「大手のうち4500店以上は以前から援助団体と食料寄付の契約をしており、食料寄付者としてはすでに突出している」とも述べている。つまり大手を法律で縛るだけではあまり効果がないということらしい。
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