世界一の「安全」を目指すボルボの戦略:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
世界で初めてクルマに3点式シートベルトを導入したのがボルボだ。それから55年余り、同社の「安全」に対する徹底ぶりは群を抜いているのだという。
そのほか、XC90に搭載された安全システムをいくつか挙げてみる。世界初となるのは、前方衝突事故の際、ブレーキペダルを火薬によってリリースし、右足の損傷を防止するシステム。ぶつかるまでは重要なブレーキペダルだが、ぶつかった後は右足を損傷させる突起物になるので、外してしまうのだ。
あるいは、後方からの追突の際、背もたれが動いて衝撃を吸収するWHIPSというシステムがある。追突されると背もたれによって体が前に押される。ところが、慣性の法則があるので、場合によっては体がシートの背もたれに沿ってせり上がり、天井に頭部を打ち付ける可能性がある。WHIPSではシートバックの腰のサポート部が後退(背もたれを立てる方向)し、全体が後ろ上方に上がりながら上体の浮き上がりを受け止め、しかるべき後にリクラインしてさらに衝撃を吸収する構造になっている。
車両全体の開発コンセプトはコンサバティブなボルボだが、こうした新機軸の安全装備に関しては、非常に独創的で「そうですか」としか言いようがない。正直なところ、これらのシステムに何か不具合があったとしても、革新的すぎて筆者には分からない。判断すべき比較対象がないからだ。
そうした理由で、若干ボルボの言いなりになっている気分を味わいながらこの文章を書いている。ただ、説明を聞いている印象としては、少なくとも「ボルボは真面目だ」と強く思う。安全という性能に特化して世界で生き残っていくことは、ボルボのグランドビジョンでもある。そこは徹底的に攻めていく構えが見て取れるのである。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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