ボルボの新型XC90は「煮詰まるまで待て」:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)
新型XC90のコンセプトや安全設計などについて高く評価してきた。しかしながら、実際に試乗してみたところ、現実的なセッティングの問題が露呈した。今回はそれに言及する。
電動パワーステアリングも気になる
もう1つは電動パワーステアリングのチューニングだ。特にダイナミックモードで高速道路を走ると、アシストモーターがウソの手応えを返して来るのが気になる。自転車のフロントフォークを思い出してほしい。まっすぐ走っているときの中立付近はゆるゆるで、大きくハンドルを切ったときはその分量に比例して中立に戻ろうとする力が強くなる。あれはフォークの回転軸延長線が地面に交差する点とタイヤの接地点のズレが抵抗になって中立を保持するセルフアライニングトルクが自然に発生しているのだ。これがステアリングフィールの麗しい姿である。
ところが、パワステにするとこの自然な反力のフィードバックが難しくなる。油圧式のパワステも最初は酷いものだったが、散々なバッシングを受けてようやく自然なものになったのだ。ところが、モーターの場合それが難しい。反力そのものをモーターで作り出せてしまうため、セッティングの選択肢が増える。人口調味料だらけで元の味が分からなくなる。しかも油圧よりデリケートなのでタイヤが摩耗しただけでフィールが変わってしまう。
この電動パワステのセッティングを上手にできている例はあまりない。力がおよばないならばまだ仕方ないのだが、V40にDrive-E以前のフォード製エンジン(開発はマツダ)が積まれていたころは、それがきちんとできていた。あのフィールに追いつければいいが、できないと「あれはフォードの技術力だったのか」と言われてしまう。ボルボには奮起してほしいところだ。
実はXC90のハンドリングは大きく舵角を当てたところからは問題ない。あるいはワインディングのような場所でも2トンの巨体とは思えない身のこなしを見せる。その領域で何かあれば危険なのでその性能を担保することを間違っているとは言えないのだが、個人的にはそのためにハイグリップタイヤを選択して、日常的な直進安定性が失われたSUVというところに疑問を感じるのである。もう少し高いレベルで両立することはできなかったのだろうか?
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