ボルボの新型XC90は「煮詰まるまで待て」:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)
新型XC90のコンセプトや安全設計などについて高く評価してきた。しかしながら、実際に試乗してみたところ、現実的なセッティングの問題が露呈した。今回はそれに言及する。
サスペンションのコンパクト化の代償
さらに前述の「ドライブモード」の切り替えではエアサスペンションの空気圧を変えることで車高が変化する。デフォルトと比較して「エコ」でマイナス10から20ミリ、「ダイナミック」では20ミリ車高が下がる。ダイナミックにしたとき、最も直進安定性が落ちたことからもこのキャンバー変化によるネガが原因だと思われるのだ。
なぜそんなことになったかと言えば、サスペンションのコンパクト化の代償だ。エアサスペンションでないモデルでは、省スペース化のためにコイルスプリングではなくカーボンファイバー複合素材を使った横置きリーフスプリングを採用している点からみても、コンパクト化はリヤサスペンションに課せられた使命だったのだろう。
そこまでしてリヤサスをコンパクトにまとめた結果、得たものが3列目のシートの高い安全性であり、またプラグインハイブリッドモデルのモーターユニットのリヤ配置である。リヤサスペンションの設計はそれらのために制限を受けていることになる。
さらにこの状況を加速させているのが、ハイグリップタイヤの採用だ。試乗したT6 AWD Inscription(インスクリプション) ではコンチネンタル・スポーツコンタクトの275/45R20という巨大なもので、グレードがR-Designになると275/35R22にエスカレートする。基準モデルたるT5 AWDですら235/55R19というサイズである。もう少し穏やかな銘柄のタイヤを履くか、サイズを少し落とせば、キャンバー変化の影響は減るはずである。
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