お茶を通じて私が学ぶこと:内田恭子の「いつもそばに本があった」(1/3 ページ)
昨今、ビジネスマンからの人気も高い茶道。内田恭子さんも1年前からお茶の稽古に通っていますが、そこで友人から1冊の本を紹介されたそうです。
内田恭子の「いつもそばに本があった」:
幼いころ両親に読んでもらった絵本、学生時代に読みあさった小説、アナウンサーの就職面接で朗読したバイブル的な一冊、そして今度は自分が親となり子どもたちに本を読み聞かせている――。これまでの人生を振り返ってみると、常に私の傍らには本がありました。
この連載では、日常生活の中で出会った数多くの本たちをエピソードなどとともに、ビジネスパーソンの皆さんにご紹介していきます。
最近、茶道や華道といった日本の伝統文化を習うビジネスマンが増えているそうです。茶道から得られることはさまざまですが、例えば、礼儀作法やおもてなしの精神はビジネスの世界にも通ずるもの。そうしたところが人気の秘密のようですね。
実は私も1年前からお茶のお稽古に通っています。お茶を習い始めたのは、ふとしたことがきっかけでした。
ある日、お着物を着る仕事をしたときに、「私、この歳になっても自分で着付けができない」という衝撃的事実に気が付き、「日本人としてこれはとても恥ずかしいことではないか」と猛反省。そこで「着物を着る機会を増やそう」と決心し、「ならば、まずはお茶を習おう!」という安易な考えで茶道にたどり着いたわけで。
とはいえ、お茶は幼いころ、母に一度だけ茶会に連れていってもらった経験しかなくて、どこの流派がいいか、どんな先生のもとでご指導を受ければいいのか分かるはずもありません。けれども、いつもの気楽さで「きっといつかそのタイミングが来るだろう」とのんびりと流れに身を任せていたところ、とあるご縁でそのタイミングが本当にやってきたのです。
その日は一度しかない
お稽古を始めてようやく1年経った先月、お初釜に参加してきました。お初釜とは、茶道の行事の1つで、年始めに開かれる茶会のことです。
「いまだにきちんとお点前の順序すら覚えきれてないのにお初釜なんて……」。仕事だって前日からドキドキしたことがないのに、お初釜の一週間前から気持ちはオロオロと落ち着かない状態。そんなときに思い出したのが、お茶を始めたばかりのころ、友人が「これでさらにお茶が好きになるはずよ」とプレゼントしてくれた一冊の本。森下典子さんの「日日是好日」。すがる思いでもう一度じっくりと読み返してみる。
タイトルだけを聞くと、「お茶の世界の本か」と、お茶に興味のない方はスルーしてしまいそうだけれども、ちょっと待った! お茶の世界を知らないビジネスマンの方々でも、きっと楽しめる一冊です。まだ、お茶の「お」の字も理解できていない私が自信を持ってお薦めします(笑)。
本書は、森下さんが悩み多き20歳のとき、お母さんのススメで何となくお茶を習い始めることになったところからストーリーが動き出します。当然すべてが初めての経験で、「自分は何も知らない」ということを知るわけです。そこから年月とともに徐々に成長していくわけですが、その過程であった出来事をユーモラスに、ときには切なく描いています。お茶の基本もその都度、分かりやすく丁寧に説明してくれるので、前提知識がなくても大丈夫。
何よりもこの本は、お茶を通して、人生のあり方、尊さ、幸せとは何かのヒントを教えてくれます。タイトルの日日是好日とは、「毎日毎日が無事で良い日である」と辞書に出ています。実は禅語からきている言葉で、「嵐の日でもあっても、日々起きる好悪のできごとがあっても、その日は一度しかない日であり、かけがえのない日なのだから、これを一生懸命生きることが、まさに良い日となる」という意味だそうです。
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