お茶を通じて私が学ぶこと:内田恭子の「いつもそばに本があった」(2/3 ページ)
昨今、ビジネスマンからの人気も高い茶道。内田恭子さんも1年前からお茶の稽古に通っていますが、そこで友人から1冊の本を紹介されたそうです。
人生にも季節がある
お茶は季節と密接にかかわりあっています。
私たちが何気なく日々を過ごす中で、暦や気候の変化で季節を感じています。「暖かくなってきたから春だな」とか「日が長くなったな」とか。一方お茶の世界では、季節を五感のすべてを使って感じることができます。旬の季節を見事に表現する繊細な和菓子をはじめ、茶道具、茶花、掛け軸、お着物や帯、炉や風炉などに触れると、季節って春夏秋冬の4つだけではなく、もっと奥深く、はかなく美しいものなんだということに気付かされます。
その時期にしか咲かない花、感じられない香り、味わうことができない風味。身の回りにはそうしたものがたくさんあるはずなのに、今まで普段の生活ではどれだけないがしろに通り過ぎてきていたのかと気付かされます。
もちろん、美しい季節だけではなく、寒く辛い冬だってあるわけです。そんなときはじっとこもりながら自分を見つめ直して春を待つ。そして春の訪れとともに、気分も明るく活動的になる。そんな風に人生の中でも季節はあるのだと森下さんは記しています。
「私は生きものの冬越えの厳しさを知った。節分、立春、雨水と指折り数えて自分自身を励まし、何度も冬への揺り戻しに試されながら、辛抱強く、人生のある季節を乗り越えようとしたことだろう」
物事が思うようにうまくいかない、何をやっても結果が出ないなど、誰にだって厳しくて長い冬はあるもの。そうしたときこそ、心と季節を重ね合わせながら一緒に過ごしていく。自分の気持ちとひとつひとつ丁寧に向き合っていくことによって、些細な変化に気が付いたり、さらに強い自分や、新しい自分に出会えたりする気がします。
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