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“昔ながらの喫茶店”でも国内3強に成長できた理由とは?高井尚之が探るヒットの裏側(2/3 ページ)

ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。前回に続き、急成長中のコメダ珈琲店について読み解く。

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「コメダ流」を踏襲するプロ経営者

 現在のファンドがコメダの全株式を取得後、2013年7月から同社社長として経営を担うのが臼井興胤氏だ。「ファンドが白羽の矢を立てた社長」となると、経済原理で冷徹に経営するイメージがあるが、非常に現場主義の人物だ。入社直後から創業者の加藤氏に会って「コメダイズム」を学び、今でも週に一度、モーニングの時間帯にコメダ本部の社屋が入る「コメダ珈琲店 葵店」で自らコーヒーを淹れてお客に提供する。

 臼井氏を最初に取材したのは、暑い時期の平日午前中だった。店舗勤務の直後に汗を拭きながら取材場所に現れたのを覚えている。

 その経歴はユニークだ。空軍パイロットに憧れて防衛大学に進学したが、中退して一橋大学に進路を変え、卒業後は三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。その後、ゲームメーカーのセガ(現・セガゲームス)に転職し、ベンチャーキャピタル、ナイキ、マクドナルドのCOO(最高執行責任者)を歴任し、セガに戻って社長に就任。さらにグルーポン東アジア統括副社長を経てコメダに転じた。

 「コメダ珈琲店は『くつろぐ、いちばんいいところ』を理念に掲げており、お客さんの居心地を重視しています。私は過去にさまざまな『消費者向けビジネス』を担当し、現場から離れた本部・本社が行う意思決定に限界があることを学びました。普段消費者と向き合っていない本部スタッフが“官僚的な目線”になると、お客さんのためにならず失敗することが多いのです」(臼井氏)

 コメダに来るまでは「典型的なジャパニーズ・ビジネスマン」だったという臼井氏も、店舗で接客するうちに新たな心境に達したという。

 「私自身、地方に出張しても空港や駅と会議室の往復の日々でした。そんな生活に疑問を感じ、コーヒーを飲む時ぐらいフルサービスの喫茶店でゆっくり過ごしたい人が多いのではないか。コメダのビジネスは高回転・高効率主義とは対極にあります」(同)

 近年は人材教育に一段と力を入れる。2014年2月に研修センターを東京都渋谷区の事務所に併設したのに続き、同年4月に福岡県福岡市(コメダ珈琲店 九大学研都市店)、2015年1月には佐賀県鳥栖市(コメダ珈琲店 鳥栖弥生が丘店)に開設した。研修は正社員向けで54日間にも及ぶ。大手競合から転職した社員は、「前職は研修期間が3週間だったので、コメダの54日間(8週間弱)は『ここまで時間をかけるのか』と驚きました」と語った。今まで以上に手厚い教育体制を構築することで、よりサービスの質を高めていくことが狙いだ。

photo 店舗を模したコメダの研修風景

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