“昔ながらの喫茶店”でも国内3強に成長できた理由とは?:高井尚之が探るヒットの裏側(3/3 ページ)
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。前回に続き、急成長中のコメダ珈琲店について読み解く。
「コメダらしさ」と「成長路線」を、どう両立させるか
国内の外食業界では「店舗数1000店」がメガブランドの目安となる。各地でよく店を見かける日本マクドナルドや日本ケンタッキー・フライド・チキン、ミスタードーナツなどはいずれもこの数字を超えている。
このうちのマクドナルドは業績不振が続き、厳しい状況なのはご存じかと思う。同社の不振の発端は、「チキンマックナゲット」に使う(当時の)鶏肉の供給先である、中国企業が使用期限切れの肉を使っていた問題が明るみとなり、安全・安心を求める消費者の「マック離れ」が進んだからだ。だが、筆者はもっと根本的な問題があると思う。
端的にいえば、現在のマクドナルドは「カッコいい店」ではないことだ。マクドナルドが日本に上陸した1971年、最初の店は三越銀座店の1階にあった。ハンバーガーやマックシェイクが味わえる米国発の“黒船”で、休日には店の前が「歩行者天国」となり、食べ歩きもできた。当時の消費者にとって「米国への憧れ」を象徴する店だったのだ。80年代は、地元の駅に「いつ『マック』が出店したか」が都会度のバロメーターだった。それがデフレ時代の「80円バーガー」や「100円マック」で、プアーなイメージとなってしまった。
同社を例に出したのは、ブランドイメージが崩れると拡大した店舗運営の負担が重荷となるからだ。近年、スターバックスコーヒーやドトールコーヒーショップを上回るスピードで店舗拡大を続けるコメダだが、「単なるgrowth(拡大)ではなく、quality growth(質を伴う拡大)で出店していく」という。
「国内では資材調達も人件費も高騰しているので無理な拡大はしません。コメダ珈琲店のよさである『居心地』を重視し、今後も自社で作るコーヒーとパン、間仕切りのある座席、フルサービスの接客といったコメダらしさを追求していきます。サービス品質が伴わずに“コメダもどき”の店を出しても仕方ありません」(臼井氏)
一方で、コメダの「成長実績」も重視する。今後、コメダが上場することになれば、株主が求めるのも「成長の青写真」だ。もちろんそれは、就任後に店舗拡大を達成してきた同氏は十分承知しているだろう。
生活文化の視点でカフェを分析してきた筆者は、どんな時代でも「日本の生活者(日本人に限らない)は、カフェでまったりするのが好き」だと感じている。近年のコメダ人気はそれを裏づける。今後は「コメダらしさ」と「成長路線」の両立がカギとなる。
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