ついに「10速オートマ」の時代が始まる:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
オートマ車の変革スピードが加速している。以前は4段ギア程度がわりと一般的だったが、今では5段、6段も珍しくない。ついにはホンダが10段のトルコンステップATを準備中なのだ。いったい何が起きているのか。
なぜ回転数を下げたいか?
というのも、エンジンは高回転にすると予想外に摩擦抵抗が増えてしまうのだ。ギヤをニュートラルにしてエンジン回転をレッドゾーンの手前まで上げてみてほしい。回転計(あればだが)の針がそこで静止するということは、アクセルの踏み込み量分のエネルギーが摩擦と釣り合っているということだ。エネルギーが上回っていれば回転数は上がり続けるし、摩擦が上回っていれば回転数は下がる。
だから、たとえ5000回転だろうが、6000回転だろうが、回転計が静止しているということは、それは工学的にはアイドリング(自立運転)なのである。アイドリングとは効率ゼロの状態のことだ。内部で全て消費してしまって何の仕事もしていない。
この無駄をなくすためには、エンジン回転を下げるのが手っ取り早い。特に巡航のような大きなパワーを必要としない領域で回転を落とすと燃費の稼ぎ代が大きい。高速巡航で燃費がピークになるのは、多くのクルマの場合、時速80キロ程度である。運転する側にしてみると制限速度100キロの高速道路を、燃費のために80キロで走らなくてはならないのは不便だ。しかも実際の交通の流れは120キロ近い場合も少なくないのだ。
少なくとも100キロで燃費のピークを出せるようにするためには、レシオカバレッジを上げて、100キロでのエンジン回転数を2000回転以下に落としたい。ターボを使って低速でのトルクをしっかり出せば、100キロでの走行抵抗と釣り合うだけの出力を低回転でも十分に出せる目算が立った今、レシオカバレッジの大きな変速機が注目を集めるようになったのである。前述のダイムラーの9段の場合、時速100キロ時の計算上の回転数は約1100回転になる。
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