地ビールブームから一転、8年連続赤字で“地獄”を見たヤッホーブルーイング:新連載・「よなよなエール」流 ガチンコ経営(5/5 ページ)
現在、11年連続で増収増益、直近4年間の売り上げの伸びは前年比30〜40%増と、国内クラフトビール業界でダントツ1位に立つヤッホーブルーイング。しかしここまではいばらの道だった……。井手直行社長が自身の言葉で苦闘の日々を語る。
新社長としての覚悟
そして話は2008年へと進みます。インターネット通販事業の成長が起爆剤となり、酒屋さんやスーパー、コンビニでもよなよなエールを扱ってくれるお店が増えてきました。経営も順調に推移してきたこともあり、社長職を星野からバトンタッチし、私が受け継ぐことになりました。本業である星野リゾートの仕事が忙しく、会社に常駐していない星野に代わり今までも実務的にはリーダー的役割をこなしてはきましたが、社長になることで本当に思い切った経営ができると、覚悟を新たにしました。
そこでまず、私が着手したのは「チーム作り」でした。当時、3期連続の増収増益・黒字化で波に乗りつつありましたが、私にとって危惧することがありました。それはスタッフの皆は一人でやる仕事は頑張ってくれるが、数人でやる大きな仕事はいろいろな問題があり、消極的であり、その結果、全く進まなかったのです。今後の成長を考えると、当然今までのような一人でやる仕事ではなく、チームで取り組む仕事がメインとなるはずです。しかし、今の状況では確実に無理だということが明らかでした。
社内は以前の最悪な状態からは脱していましたが、相変わらずお通夜のような暗い雰囲気が漂っていて、皆の士気もなかなか上がりません。このままでは近い将来成長は鈍化する。それだけではなく、また市場環境などの変化に飲み込まれて売り上げが下降線をたどり、以前のようにスタッフの大量退職の危機が来るかもしれない。
そうなる前に、チーム化を促進し、何が起きても崩れない強固な体制を築く必要がある。そしてチームで業績を向上させ、より大きな成果を得られるようにする。その成功体験は必ずチームメンバーに喜びと希望を与えるはずだ。これこそが今取り組むべき最も重要なテーマでした。
過去のスタッフの大量退職を繰り返さない、そして成長を持続させるための策として、私は経営で難易度が高いと言われる1つ、「チーム作り」に会社の命運をかけることにしたのです。
さて、次回以降は、よなよなエール流 ガチンコ経営の神髄として、「ファンとの関係構築のガチンコ」、そして「スタッフとのチーム作りのガチンコ」についてお伝えしていきます。
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