22年間で487倍に! 「安さ」だけではない、チリワイン輸入量急増のわけ(1/2 ページ)
長らく首位を守り続けてきたフランスの牙城がついに崩れた。2015年のスティルワイン年間輸入数量でチリがフランスを抜きトップに躍り出たのだ。その急成長の理由とは――。
紅茶の生産地といえば、インドやスリランカがよく知られているが、実は数年前から日本はケニアからの輸入が増えているのをご存じだろうか。例えば、3キログラム以下の直接包装した紅茶では、この15年間で4.5倍も輸入数量が伸びているのである。今やアフリカ産の紅茶がトレンドになりつつあるのだ。
実は、似たような動きはワインの世界でも起きている。これまで海外ワインと言えば、フランスやイタリア――。多くの人がこうしたイメージを持っているだろうが、それが大きく変わろうとしている。
2015年、スティルワイン(非発泡性ワイン)の年間輸入数量でチリがフランスを抜き、初めて1位に立ったのだ。財務省関税局の発表によると、チリワインの輸入量は前年比約18%増の5万5106キロリットルで、フランスの5万4645キロリットルを上回った。
チリワインの輸入量はこの10年間で約7倍、1993年にまでさかのぼると実に487倍を超える伸長となっている。輸入ワイン市場全体がここ20年で約4倍の拡大であることを考えると、いかにチリワインが示す数字が驚異的であるかが分かる。
90年代後半の赤ワインブームで定着
なぜチリワインの輸入量がこれほどまでに急速な成長を遂げているのだろうか。その最大の要因が「安さ」である。現在、チリワインの小売販売価格は「500円未満」「800円未満」がボリュームゾーン。例えば、フランスワインの1000円前後と比べると、その価格差は大きい。
チリワインが低価格を実現できるのは関税の影響だ。従来から安価で販売していた上に、2007年に発効された日本・チリ経済連携協定(EPA)が拍車を掛けた。通常、輸入ワインの関税率は、輸入価格の15%または1リットルあたり125円のうち、低い方が適用されるが、チリワインは2007年から段階的に関税が引き下げられており、現在は4.6%もしくは1リットル当たり125円となっている。さらに2019年には関税がゼロになる予定だ。
ただし、“安かろう悪かろう”では消費者の心をつかむことはできない。チリワインが伸びているもう1つの理由は「味」にあると、国内ワインメーカーのメルシャンで営業本部 マーケティング部長を務める森裕史氏は述べる。
同社は1994年からチリの最大手ワイナリー、コンチャ・イ・トロのボトルワインを販売しており、1997〜98年ごろに起きた赤ワインブームに乗って、当時それほど一般には知られていなかったチリワインを日本の食卓に売りまくった。
赤ワインブームとは、赤ワインに含まれるポリフェノールが動脈硬化や脳梗塞などを防ぐということで注目を集めた出来事。中でもブドウ品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」を使ったチリワインが、渋みが少なくマイルドな味わいということでライトユーザーにも受け入れられて大流行した。その結果、1998年にチリワインの年間輸入数量は前年比397.6%増となる2万7591キロリットルと一気に市場シェアを拡大し、市民権を得たのである。
このときにできた「チリワインは味が良い」というイメージが広く浸透し、それが今ではコストパフォーマンスの高いワインとして日本の消費者に定着したのだと森氏はいう。
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