地ビールブームから一転、8年連続赤字で“地獄”を見たヤッホーブルーイング:新連載・「よなよなエール」流 ガチンコ経営(1/5 ページ)
現在、11年連続で増収増益、直近4年間の売り上げの伸びは前年比30〜40%増と、国内クラフトビール業界でダントツ1位に立つヤッホーブルーイング。しかしここまではいばらの道だった……。井手直行社長が自身の言葉で苦闘の日々を語る。
「こんな雰囲気の悪い会社で働けません!」
「こんな味のビール、日本でウケるはずがなかったんだ!」
「営業がビールを売ってこないからダメなんだ!」
「いや、製造がもっとウマいビールを造らないのがいけないんだ!」
会社は創業から8年連続の赤字。「倒産」という危機的二文字が常に頭をよぎっていました。上記のような悲しい言葉を吐き捨て、スタッフは次々と辞めていき、ついには半分くらいになってしまいました。私はもう心と体がボロボロ。出口の見えないどん底の時期を経験しました。
これはほんの10年ほど前のヤッホーブルーイングの状況です。私たちはクラフトビール(昔は地ビールと呼ばれていました)を製造しています。看板ビールの「よなよなエール」は最近全国のローソンやイトーヨーカドー、SEIYUなどのスーパーでも置かれるようになってきました。ほかにも「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など、味だけでなく名前、デザインもユニークな製品を世に出しています。読者の中にもご存じの方がいるのではないでしょうか。
現在、業績は11年連続で増収増益中。直近4年間の売り上げの伸びは前年比30〜40%増と、クラフトビール業界でダントツの最大手となりました。インターネット通販では楽天市場の自社店舗で9年連続「ショップ・オブ・ザ・イヤー」(年間MVP店舗:ビール洋酒ジャンル)を受賞するなど順調で、メディアで紹介される機会も増えました。
社内の雰囲気はというと、まだ理想の姿には至っていないのですが、上下関係などなく自由に議論できるフラットな組織に生まれ変わりました。究極の顧客志向を目指し、自ら考え行動し、仕事を楽しみ、切磋琢磨し、「知的な変わり者」と呼ばれる個性を伸ばす仕事の仕方をするという、活気もありユニークな組織だと胸を張れます。
出産や育児、家庭の事情を最優先しながら、仕事は周りの皆でフォローすることが当たり前の文化もできてきました。最近は、女性が活躍する職場や、ワークライフバランスについての講演依頼も増え、そんな会社の雰囲気を見てみたいと全国の企業や自治体の方々も見学に来るようになりました。
いかにしてヤッホーブルーイングはどん底から這い上がったのでしょうか。こんな私たちの波乱万丈の軌跡を包み隠さずお伝えしたいと思います。
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