なぜマイクロソフトは自社ブランド端末「Lumia」を日本に投入しないのか?(4/4 ページ)
さまざまな企業が参入し、日本で「Windows 10 Mobile」搭載のスマートフォンが相次いで発売されている。マイクロソフトは力を入れているというが、その本気度を感じられない、ある理由があるのだ。
「Surface Phone」で巻き返し?
では、マイクロソフトはこのまま指をくわえているだけなのだろうか。実は、マイクロソフトは大胆な巻き返し策を画策しているように感じられる。
その切り札となるのが、うわさに上がっている「Surface Phone」の存在だ。マイクロソフト側では、その存在について公式には認めていないが、既にマイクロソフトがSurface Phoneというドメインを確保するなどの動きも見られている。そして、同社が投入しているWindowsデバイス「Surface」の流れを汲む名称が示すように、新たな市場を開拓するフラッグシップ的な製品となることが期待される。つまり、Surface Phoneの登場によって、Windows Phoneが置かれた状況が一変する可能性がある。
残念ながら、Lumiaのブランドイメージは、低価格モデルのイメージが付きすぎた感がある。中国や新興国において成功しているのは低価格モデルであり、米国でも低価格モデルが人気だ。上位モデルもラインアップはされているが、Windows Phoneをけん引するようなフラッグシップと呼べる存在が見当たりにくい。
だが、仮に、Surface Phoneが登場し、この状況を払拭(ふっしょく)するのであれば、大きくビジネスは成長するかもしれない。Windows Phone全体のリブランディングを行い、今までの位置付けをリセットできる可能性を持つからだ。そして、懸念のアプリ不足も懸念のアプリ不足も、Windows 10のユニバーサルプラットフォームの活用によって解決できるだろう。もちろん、Lumiaブランドを継続させ、ダブルブランド戦略とし、普及価格帯の製品群を投入し続けることも可能だ。Lumiaの認知度が高い中国や新興国、あるいはノキアが強かった欧州では、Lumiaブランドを活用する意味もあるからだ。
一方で、日本市場に向けては、Surface Phoneであれば、新たな投資を行うことができるはずだ。なぜならSurfaceの販売実績では世界的にもトップクラスを誇り、先ごろ発売された「Surface Book」も、日本においては、予約時点で、最上位機種が売り切れになるという事態が起きた。高機能モデルが売れる日本市場は、Surface Phoneの導入において、欠かすことができない市場だと言えよう。
Surface Phoneは、Windows Phoneにとって、生き残りをかけた最後の切り札であると同時に、日本においては、Windows Phoneの本命であるマイクロソフトブランドのスマホが導入されることになる最後のチャンスと言えるかもしれない。もしも、こうした戦略が描かれているのならば、今、マイクロソフトがLumiaを日本に投入しなくても、十分に納得できるはずだ。
著者プロフィール
大河原克行(おおかわら かつゆき)
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PC Watch(インプレス)の「パソコン業界東奔西走」をはじめ、新聞、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。
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