なぜマイクロソフトは自社ブランド端末「Lumia」を日本に投入しないのか?(3/4 ページ)
さまざまな企業が参入し、日本で「Windows 10 Mobile」搭載のスマートフォンが相次いで発売されている。マイクロソフトは力を入れているというが、その本気度を感じられない、ある理由があるのだ。
なぜ「Lumia」を日本市場に投入しないのか
しかし、これだけのメーカーが参入していながらも、Windows 10 Mobileの本気ぶりが感じられないのは、やはりマイクロソフトが自社ブランドである「Lumia」を、日本市場に展開していないからだろう。
マイクロソフトは、2013年9月にフィンランドの携帯電話メーカーであるノキアを買収し、そのブランドである「Lumia」を使用したWindows Phoneを投入した。既に欧米や中国、新興国などで、LumiaブランドのWindows Phoneを発売している。調査会社・IDCの調べによると、2015年に全世界で発売されたWindows Phoneは、1110万台。そのうちの95%がマイクロソフトの製品だという。つまり、日本では、Windows Phoneの「本命」抜きの状態が続いているのだ。
Lumiaの国内投入に対する期待の声は高く、記者会見においても、何度となく、それに関する質問が飛んでいるが、日本マイクロソフトの回答は決まって、「市場投入に向けて、前向きに検討を行っている」(日本マイクロソフト・平野拓也社長)というコメントに終始している。
では、なぜマイクロソフトはいつまでもLumiaを日本市場に投入しないのだろうか。
その最大の理由は、米国をはじめとする世界各国で、Lumiaのビジネスが決して成功してはいないからだ。ノキア時代には、世界最大の携帯電話メーカーという地位を誇ったものの、スマホへのシフトが遅れ、最終的にはマイクロソフトによる買収の道を歩むことになった。買収後もLumiaの失速は依然として続いている。
先に触れた、IDCの調査によって明らかになった1100万台というWindows Phoneの出荷規模は、Android搭載スマホの11億7000万台、iPhoneの2億3150万台に比べると格段の差がある。Windows Phoneの市場シェアは、全世界のスマホ市場の1%台にとどまっているのだ。そして、AndroidおよびiPhoneが成長を遂げているのに対して、Windows Phoneは、出荷台数が前年比18%減となっている。
この状態で日本市場向けて自社ブランド製品を投入しても、勝算がないと判断するのは当然のことだ。特に日本の場合には、ノキアが撤退していたこともあり、販売体制やサポート体制など、すべてのインフラを一から作る必要がある。日本市場にそれだけの大きな投資をする状況にはないと言える。
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