高くても売れる平田牧場の豚肉はこうして生まれた:高井尚之が探るヒットの裏側(2/2 ページ)
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回は「平牧三元豚」などのブランド豚で有名な平田牧場について読み解く。
手間と時間をかけて育てた食品は「どんどん安く」はならない
レストラン以外に物販店も展開する平田牧場では、無添加ソーセージや無添加ハムも扱い、実店舗以外にインターネット販売もしている。今でこそ「無添加」は珍しくないが、同社は40年以上前から無添加ポークウインナーに取り組んできた。
これを二人三脚で実現したのが「生活クラブ」(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会)という組織だ。現在はグループ合計で組合員約34万人を擁する大組織で、その大半は食の安全・安心に厳しい目を向ける一般家庭の主婦だ。今でも平田牧場の食肉の多くは、同組合員の家庭で消費されている。同社は、そうした「主婦の厳しい目」に鍛えられてきた。
また、毎年「庄内交流会」として同生協の組合員を酒田市に招き、自社の農場を見学してもらう。これもまた、40年以上続く行事だ。組合員は農場だけではなく、ソーセージなどの加工肉を製造する工場も見学する。無添加ポークソーセージの製造ラインの脇には、真塩や小麦でんぷん、スパイス、平田牧場の豚から抽出したポークエキスなどの副原料が展示されている。
消費者は「口に入れる食品は安心して安全なものを食べたい」のだが、残念ながら食品不祥事は頻繁に発生する。産業廃棄物として廃棄されたはずの「冷凍かつ」が食品売り場に出回った事件は、記憶に新しい。
そうした中、同社が現在強く意識していることは「それぞれの仕事をもう一度見つめ直し、より“丁寧さ”を追求する」ことだそうだ。
食品の製造現場を取材すると、一部の企業が掲げる「よい品をどんどん安く」といったキャッチコピーには疑問を感じてしまう。同社のブランド豚肉作りのように、手間と時間をかけて育てた食品は決して「どんどん安く」はならないのだ。そして、食の安全を追求する同社のこうした「企業活動の見える化」は、食品関連企業が消費者から信頼を得る取り組みとして大いに参考となるだろう。
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