米国水族館の「シャチのショー廃止」を日本企業が注目すべき理由:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
米国の海洋テーマパーク「シーワールド」が話題になっている。今後シャチのショーを廃止し、繁殖も終了するということだが、この動きの背景に何があったのか。また、日本への影響はないのか。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
米国の海洋テーマパーク「シーワールド」が、今後シャチのショーを廃止し、繁殖も終了する――そんなニュースが報じられて世界的に話題になっている。
2016年3月17日、シーワールドはTwitterで「速報:現在飼育しているシャチがシーワールドで飼育する最後のシャチたちになります」とツイートした。実はシーワールドは何年も前から動物愛護団体と対立しており、結局、彼らの主張を受け入れる形となった。この話題は水族館や動物園で飼育されている動物の扱いにまで議論が拡大し、さまざまな反応が湧き上がっている。
動物愛護などの活動により、企業や国が方針転換を余儀なくされるケースが近年、世界的に目立ってきている。そしてこの傾向は日本にとっても対岸の火事ではなく、日本企業もきちんとこの実態を把握しておかなければ命取りになりかねないと言える。
今回、シーワールドがショー廃止の決断を下したのに大きな役割を果たしたのが、2013年に公開されたドキュメンタリー映画だった。そのドキュメンタリー『Blackfish(ブラックフィッシュ)』は、シーワールドに勤めていたシャチ調教師がシャチに殺されたとされるケースを追い、また飼育環境がいかに動物に悪影響かを描いた作品だ
この映画は、公開後からメディアでも広く取り上げられ、その後、米ケーブル局CNNで放送されると大きな議論を生んだ。批判の対象になったシーワールド側は評論家たちに映画内容を批判する書簡を送るなど、全面的に立ち向かう姿勢を見せた。だが結局、動物愛護団体からの執拗(しつよう)なシーワールド・ボイコット活動が行われるなどイメージダウンは避けられず、2014年にはシーワールドが主催する予定だったミュージックコンサートに出演予定だったバンドが次々と参加をキャンセルする事態になった。そして同年、こうした混乱を受けCEOが辞任し、さらに米下院でシャチの移動や繁殖などを禁止する法案まで提出された。
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