米国水族館の「シャチのショー廃止」を日本企業が注目すべき理由:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
米国の海洋テーマパーク「シーワールド」が話題になっている。今後シャチのショーを廃止し、繁殖も終了するということだが、この動きの背景に何があったのか。また、日本への影響はないのか。
対岸の火事ではない
実はハリウッドに限らず、動物愛護の風潮には国家もからむようになっている。
海洋動物で言えば、ブラジルやニカラグア、ルクセンブルグ、ノルウェーでは、規制強化によって事実上、海洋哺乳類を飼育することはできなくなっているという。チリやコスタリカ、クロアチアでは海洋哺乳類の保有を禁じ、インドもエンターテインメント目的で捕獲したイルカの保有を禁じている。
また海洋動物以外でも、メキシコではサーカスで動物を使うことが禁じられているし、スペインで闘牛が禁じられたのはよく知られている。さらにインド、イスラエル、ノルウェー、ニュージーランドは動物実験で作られたコスメ商品の輸入を禁じている。もちろんこうした規制の背景には動物愛護団体の活動がある。
こう見ると、この流れがもはや日本にとっても対岸の火事では済まなくなるだろうと想像できる。もっとも、実際にはすでに日本企業にも波及している。最近で言うと、キッコーマンの米国本社は2015年、動物愛護団体から1カ月にわたって、多数の電子メール送付やSNSキャンペーン、またオンライン署名が続けられたことで、動物を使った健康効果テストの中止に追い込まれた。また日本航空(JAL)も、動物愛護団体による再三の申し入れによって、実験用サルの輸送中止を発表している。
日本は、イルカ漁を批判的に描写したドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』で動物愛護団体からの執拗な批判活動を経験済みである。しかし日本でもシャチのショーは行なわれており、欧米の動物愛護団体から今後どんな反応が来るのかも気になるところだ(世界でシャチを飼育している国は、日本、カナダ、米国、アルゼンチン、スペイン、フランス、ロシア、中国だけ)。
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