いま各社が動画配信ビジネスに夢中になるワケ:西田宗千佳のニュース深堀り(1/4 ページ)
いま、動画配信ビジネスが過熱している――。各企業が動画に乗り出すのはなぜか? キーワードは「スマートフォン」と「若者」だ。
西田宗千佳 著者プロフィール
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、PC・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。近著に「ネットフリックスの時代」(講談社現代新書)、「すごい家電」(講談社ブルーバックス)がある。
いま、動画配信ビジネスが過熱している――。
サイバーエージェントとテレビ朝日は2016年4月11日から、共同でネットでの映像配信サービス「AbemaTV」を正式オープンした。2015年末にはLINEが、「生」にこだわった映像配信サービス「LINE LIVE」をスタートしている。こちらも好調で、サービス開始から3カ月後に「映像視聴者の累計が1億人を超えた」と発表した。
これらの企業が動画に乗り出すのはなぜか? キーワードは「スマートフォン」と「若者」だ。
スマホの中に「動画の市場」が立ち上がる
AbemaTVもLINE LIVEも、ターゲットはスマートフォンだ。専用アプリが無料で提供され、そこから簡単に視聴できる。Web経由でPCからも視聴できるが、視聴者のほとんどはスマートフォン経由である。
使ってみると、その特質はさらにはっきりしてくる。番組から番組へ渡り歩いて、暇つぶしをするのがとても簡単なのだ。特にAbemaTVはその傾向が強い。テレビのチャンネルを切り替えるように、好きな番組を探してザッピングしていける。どちらも、基本はそれぞれのサービスのために用意されたオリジナル番組。ネット向けというと質が低い、と思われそうだが、そうでもない。
要は、彼らが狙っているのは「スマートフォンを使っているときのメディア」である。それも、“暇な時間”のメディアだ。サイバーエージェントの藤田晋社長は「狙いはスマートフォンの中にテレビ局を作ること」と言い切る。LINEでLINE LIVEを担当する佐々木大輔執行役員は、「テレビとは違うものを作りたい」としつつも「スマートフォン世代が共感する人たちが出演するメディアを作りたい」という。
サービスの基本方針は若干異なるものの、どちらも本質は「スマートフォン世代のための動画メディアを作る」ということである。
テレビ局もスマートフォン上で動画ビジネスを展開している。日本テレビ・TBS・テレビ朝日・フジテレビ・テレビ東京は、2015年11月から、テレビ番組の見逃し配信サービス「TVer」を展開している。同年2月29日にはアプリのダウンロード数が200万を超えた。これは、各テレビ局の予想よりかなり速いものであるという。
2015年は、NetflixやAmazon Prime Videoをはじめとした、月額料金制映像配信(SVOD)の日本参入が相次いだ。NTTドコモ・エイベックスの合弁事業であるdTV、日本テレビ傘下でサービスを展開するHuluなど、既に国内でビジネスを展開していた企業も対抗し、サービスの内容もコンテンツのラインアップも充実した。これらのサービスは、テレビだけでなくPCやスマートフォンなど、マルチデバイスで利用できることがポイントである。テレビでの利用率は意外に高い、と聞いているものの、「日本ではモバイル機器からの視聴がもっとも多い」とNetflixは説明している。
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