羽田空港を便利にする「たった200メートル」の延長線計画:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
国土交通大臣の諮問機関「交通政策審議会」が、2030年を見据えた東京圏の鉄道計画をまとめた。過去の「運輸政策審議会答申18号」をほぼ踏襲しているとはいえ、新しい計画も盛り込まれた。その中に、思わずニヤリとする項目を見つけた。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
東京の鉄道網をデザインする答申案
2016年4月7日、交通政策審議会は「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(案)」をまとめた。東京に限らず、鉄道は地方行政と密接なかかわりがある。そこで国土交通省が国土交通大臣の諮問を受けて、地方ごとに交通審議会を設け、自治体や運輸事業者の要望を整理する。まさに「交通整理」だ。そこで客観的に重要と認められた案件が国土交通大臣宛てに答申される。
首都・東京とその周辺については、運輸省時代から「運輸政策審議会」が答申を作成していた。いわば「路線開発のお墨付き」である。鉄道会社と自治体の話し合いがもたれ、事業が伸展していく。鉄道開発は沿線の地価を左右するから、答申は鉄道事業者だけではなく、不動産業、レジャー産業など広範囲から注目を集める。
運輸政策審議会は省庁再編の結果、交通政策審議会となった。運輸政策審議会が提出した答申18号の目標が2015年年度だったため、引き続き、交通政策審議会が新たな答申を作成したという経緯だ。新路線の建設は、鉄道会社の構想発表や自治体の国への働きかけなどが報じられている。それらの多くが答申案に盛り込んでもらうための活動といえる。
新たな答申案は、答申18号の未完成区間をほぼ継承している。答申18号の背景は「混雑緩和」と、拡大した住宅地域からの「通勤時間の短縮」。そして、成田空港B滑走路建設、羽田空港再拡張工事を見越した空港アクセスであった。
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