羽田空港を便利にする「たった200メートル」の延長線計画:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
国土交通大臣の諮問機関「交通政策審議会」が、2030年を見据えた東京圏の鉄道計画をまとめた。過去の「運輸政策審議会答申18号」をほぼ踏襲しているとはいえ、新しい計画も盛り込まれた。その中に、思わずニヤリとする項目を見つけた。
新しい答申案を俯瞰する
新たな答申案の背景として、最も重要な要素は「東京の国際競争力の強化」だ。羽田空港の国際線が増便し、成田空港はLCC(格安航空会社)が成長した。グローバル企業のアジア拠点として東京を選んでもらうために、空港アクセスの交通整備は欠かせない。また、JR東海が自主建設を決めたリニア中央新幹線とのリンクも考慮された。リニアの駅ができる品川は羽田空港と成田空港の両方のアクセスと結節する。
地域内の傾向としては、少子高齢化による通勤・通学需要低下、夜間人口の都心回帰という要素もある。従って、路線拡大よりもバリアフリーなどを重視した「量より質」への転換が求められる。それにしては、答申18号の計画がほぼ継承されたという結果は意外でもある。
項番10の埼玉高速鉄道の延伸は地元の運動が根強く、東武鉄道が野田線の複線化や急行運転に力を入れているから理解できる。しかし項番18のメトロセブン・エイトライナーについては近年目立った動きがなかった。審議会に向けた陳情だけが行われる。まるで亡霊のようなプランである。もっとも、この路線の効用は私も評価している(関連記事)。実現に向けて具体的に動き出してほしい。交通政策審議会も「ちゃんとやりなさい」という意味を込めてリストアップしたと思う。
最も緊急性の高い区間は、項番17の京王線笹塚〜調布間複線化だ。ここは輸送力の増大という意味だけではなく、踏切の解消が急務になっている。先日の国会で「踏切道改良促進法」に基づき、国土交通省が4月12日に改善すべき踏切を公表した。58カ所のうち25カ所が京王線で占められている。同法は自治体と鉄道事業者に任せきりだった踏切の改良、解消について、国土交通大臣が改良すべき踏切道を指定し、改善を促すよう改められた。
関連記事
- 渋谷―羽田アクセス線対決! 東急が「蒲蒲線」に前向きになった理由
「蒲蒲線」が、やっと動き出しそうだ。2014年9月、東急電鉄が国土交通省で開催された会議で「蒲蒲線」に言及した。構想発表から14年間も停滞していたのに、なぜ東急電鉄は「蒲蒲線」に前向きになったのか。その理由は……。 - なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前が
秩父鉄道の踏切で自転車に乗った小学生が電車と接触して亡くなった。4年前にもこの踏切で小学生が亡くなっている。なぜ事故は防げなかったのか。踏切に関する政策を転換し、「安全な踏切」を開発する必要がある。 - なぜ、いま「羽田空港関連の鉄道建設」が盛り上がっているのか
羽田空港への鉄道整備計画が活発だ。JR東日本は貨物線を使う都心アクセス路線を計画。政府は都営浅草線の新線を構想し、東急蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ路線計画もある。しかし、どれも東京オリンピックに間に合いそうにない。そこで杉山氏が提案するのは……。 - 超電導リニアを試乗「たいしたことない」、だからスゴい
JR東海は2014年度から超電導リニアの体験試乗会を開催している。たいそうな競争率のようで、何度か応募しつつも落選したけれど、この夏、やっと当選したので乗ってみた。意外にも新鮮な感動はなかった。新幹線と同じ乗り心地。ただし、それが時速500キロメートルで走行中ということを忘れてはいけない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.