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羽田空港を便利にする「たった200メートル」の延長線計画:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
国土交通大臣の諮問機関「交通政策審議会」が、2030年を見据えた東京圏の鉄道計画をまとめた。過去の「運輸政策審議会答申18号」をほぼ踏襲しているとはいえ、新しい計画も盛り込まれた。その中に、思わずニヤリとする項目を見つけた。
京急空港線の増発にはほかにも課題がある。ほとんどの列車が京急本線に乗り入れて、都心方面と横浜方面に直通する。そのため本線のダイヤにも影響される。ラッシュ時などは本線の列車が増えるため、空港線直通列車を設定しにくい。羽田空港側に引上線があれば、そこに空港線内折り返し列車を留置し、必要なときだけ運行できる。
もう1つ、うがった見方をすれば、新空港線(蒲蒲線)の京急乗り入れにも希望が持てる。引上線によって空港線の増発が可能になれば、その枠を新空港線からの直通列車に振り向けられる。新空港線は東急蒲田駅乗り換えの京急線案と、東急線を延伸して京急に直通する案がある。東急と京急は軌間(レール間の広さ)が異なるけれど、これは青函トンネルのような三線軌間で解決できる。鉄道に限らず、技術的に解決できれば、あとはコストと時間と利害関係の問題である。
利害関係の問題としては、京急が新空港線に前向きではない。品川〜京急蒲田間の乗客を奪われかねないからだ。交通政策審議会が「羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設」を盛り込んだ。その本心は、新空港線の実現のため、京急にもメリットを出そうという深謀遠慮かもしれない。
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