テスラは未来のクルマか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
世界的なカリスマ経営者、イーロン・マスク率いる米テスラが新型「モデル3」を発表した。既に予約が殺到し「電気自動車がメインストリームになった日」というが、果たしてそうだろうか?
ニューモデルの狙い
こうしてモデル3の発売に至るわけだが、モデル3とはテスラにとって何なのか? それは初めて量販車を目指したクルマだという点だろう。価格は3万5000ドルからとアナウンスされており、単純に換算すれば最廉価モデルは400万円ほどで購入できることになる。
さて、テスラの歴代モデルを俯瞰(ふかん)して見ると、はっきりしていることがある。とにかく「速さ」に強烈なこだわりがある。こだわりと言うよりも、ここまで来るとコンプレックスと言った方がいいかもしれない。例えば、今回のモデル3は0〜100km/h加速が6秒以下だという。と言われてもピンと来ないだろうが、街中を走っている普通のクルマ、例えば、プリウスあたりは10秒くらいだ。5秒台というのは普通の人が普通に選ぶクルマではない。
それだけの動力を担保するには大容量のバッテリーが必要だ。例えば、ニューヨークショーで発表されたプラグイン・ハイブリッドの新型プリウスPHV(関連記事)のバッテリーは8.8kWh。電気自動車の日産リーフは30kWhとなっている。テスラのバッテリーがいかに大容量となるのかが分かるだろう。
技術的にはトヨタも日産も、テスラと同等のバッテリーを搭載することは難しくない。そうしない理由は車両重量にある。テスラは公式Webサイトで車両重量を記載していない。モデル3の車両重量は分からないので、各方面の報道でモデルSの車両重量を調べてみると、その重さは実に2.2トン超えというものだ。リーフは1430kgから1480kg。日産のエンジニアはこういう現実的な車両重量に収めるためにバッテリー容量にタガをかけているわけだ(関連記事)。単純な話、2.2トンもあると立体駐車場の重量制限を超えてしまう。都市部で駐車するなら平場の駐車場を探し回らねばならない。
テスラが本当に「持続可能な移動手段」を考えるならば、適切なバッテリー搭載量に対してもう少し考えるべきだろうし、加速性能にここまでこだわる意味も分からない。大容量自慢の重たいバッテリーをずっと運び続けることは、エコを目的としたソリューションとはどう考えても思えない。
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