重くなったのに、なぜ軽く感じるのか 売り子が背負うビールサーバー:水曜インタビュー劇場(軽く感じる公演)(5/6 ページ)
野球場などでキャストと呼ばれている“売り子”が生ビールを販売している。彼女たちが背負っているサーバーは重いので、アサヒビールとデサントは共同で新しいモノを開発。さざかし「軽く」なったんだろうと思っていたら、実は「重く」なっていた。えっ、どうして……?
サーバーの密着度を高める
デサント: はい。登山者の荷物を背負って道案内をする「強力(ごうりき)」さんをご存じでしょうか。強力さんは数十キロの荷物を載せたり、人を載せたりして山を登るわけですが、彼らが背負っている背負子(しょいこ)にもフレームがあります。なぜフレームなのかというと、カラダとの密着性が高いからなんですよね。
土肥: 昔の背負子は木でできていましたが、当時から理にかなったモノを使っていたんですね。
デサント: はい。重心を上にもっていくことに着目したのですが、次に「重心をどの位置にもってくればいいのか」という問題が出てきました。身長の高い女性もいれば、低い女性もいる。その調節もできなければいけません。そこで、サーバーの中にスペーサーを入れました。“あげぞこ”のようなモノですね。身長に合わせて、スペーサーを多めに、少なめに――といった感じで最適な位置に調整できるようになりました。
土肥: 3代目を開発するにあたって、より軽く感じてもらうために、重心に着目した。サーバーの下にあげぞこのようなモノを入れて、ベルトの位置をあげて、背中の部分にフレームを入れて、サーバーの下にあげぞこのようなモノを入れて。この3つを改良することで、サーバーは完成した?
デサント: いえいえ、まだまだです。カラダとサーバーは密着しているほうがいいですよね。歩いていて、リュックが揺れているとどうしても重く感じてしまう。球場で視察したところ、キャストさんたちは階段を上ったり、下ったりされている。それを見ていると、サーバーがかなり揺れていることが分かってきました。
土肥: カラダとサーバーの密着度を高めるためにはどうしたのですか?
デサント: 人間や物体の動きを記録する「モーションキャプチャ」という技術を使って、キャストが販売しているときにどのくらいサーバーが揺れているのかを分析したんですよ。歩いているとき、階段を上っているとき、下っているとき、生ビールを注いでいるときなど。人にマークを付けて、階段を上がるときに、サーバーは何度ズレたのか。サーバーはどのくらい密着しているのかなどを調査しました。
結果、2代目のサーバーを背負っているときには、かなり揺れていることが明らかに。3代目を設計する際に、ベルトの位置を見直し、フレームの構造を見直し……といった感じで改良を加えました。2代目のモノは肩への加重がほぼ100%だったのですが、3代目は腰への加重が20%ほどになりました。つまり、負担が分散されたわけですね。
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