潘基文の最大の功績は? 国連が変わるかもしれない:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
いまのところあまり注目されていないが、2016年に新しい国連事務総長が選ばれる。これまで事務総長は“内輪”で決められていたが、今回は初めての選出。過去に例のない試みによって、国連が大きく生まれ変わるかもしれない。
国連事務総長は常任理事国の「奉公人」
2016年1月に死去した米国の元北朝鮮担当特別代表スティーブン・ボズワースのコメントを見れば、事務総長がどういう扱いで見られているのかが見える。ボズワースに言わせると、国連事務総長は米国をはじめとする常任理事国の「奉公人」に過ぎない。さらに2015年にメディアのインタビューに答えたボズワースは、潘に「指導力を発揮してもらう必要はない」とまで述べている。
例えば潘は、北朝鮮との対話を目的として2010年に国連関係者2名を北朝鮮に送り込んでいる。その行動についてもボズワースは、「米国は伝統的に国連事務局長の個人的な関与は歓迎していない」と一蹴している。
国連総長とはそうした役割くらいにしか見られていないのである。もっとも、国連職員5万人の頂点に君臨する国連のトップである潘が、任期中に何か世界を引っ張るようなリーダーシップを見せたり、世界の紛争や歪みについて効果的な言動を起こしたなんていうのは記憶にない。
また日本では、彼が韓国人ということで彼に批判的な人たちも少なくない。だがそうした感情論を差っ引いても、潘が立派に役割を果たしたかどうかには大きな疑問符が付く。
事実、過去にはインガブリット・アレニウス前事務次長が潘を批判する50ページの文書を提出して国連を去ったという事例も起きている。また英ガーディアンは、「最近引退した国連高官は潘の最大のハンディキャップは彼が英語を流ちょうに使えないことだと言う。そのために米国やそのほかの地域で支持を勝ち取ることが困難になっている。『私たちは彼に話し方や、メディアトレーニングのレッスンをした』と、この高官は言う。話し方のレッスンは多い時で週に2、3回行い、良くはなったがまだ不十分だ。『私たちはテレビ出演を控えるようアドバイスした。彼は押し付けがましい』」と、バカにした感じで書いている。
さらに最近でも、中東和平問題で失言したり、モロッコのゲリラを支持する発言をしたり、米議会議員からも「無能」と呼ばれて話題になるなど、相変わらず批判的な声が多い。
関連記事
- 世界が販売禁止に乗り出す、“つぶつぶ入り洗顔料”の何が危険なのか
スクラブ製品が、世界的に注目されているのをご存じだろうか。私たちが何気なく使っているスクラブ洗顔料や歯磨き粉などの一部には、いわゆる「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチックの粒子が使われている。その粒子が……。 - 中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。 - なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。 - 「最恐の殺人地域」を救うことができるのか 武器は日本の意外な“文化”
「中南米は危険」といった話を聞いたことがあると思うが、私たちが想像している以上に“危険”であるようだ。「世界で最も暴力的な都市2015年」を見ると、上位に中南米の都市がランクイン。こうした状況に対して、日本のある文化が期待されている。それは……。 - フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.