「震災時、コンビニの営業は難しい」これだけの裏事情:コンビニ探偵! 調査報告書(5/5 ページ)
4月14日、熊本地震が発生した。しかし、その5日後に、大手コンビニチェーンの97%の店は営業を再開したという。このニュースを聞いて、多くの人は「それはよかった」と感じられたかもしれないが、筆者の川乃氏は違和感を覚えたという。なぜなら……。
店の再開は誰の意思か
熊本地震が発生してから、5日後に大手チェーンの97%の店舗は営業を再開した。このニュースを聞いて、「オーナーの意思で店を開いたのか?」という疑問を感じた。
震災直後、店を開けるか開けないかという問題は、店が判断しなければいけない。しかし、24時間365日オープンしているコンビニにとって、「店を閉める」という作業が大きな障壁になるのだ。どういうことか。コンビニは店を閉めることを想定して、建物を設計していない。
営業時間が朝7時〜夜11時の時代は、店の入口にシャッターを付けていたが、いまの店にはない。というわけで、入口にあるカギひとつで店を閉めなければいけないのだ。多くの店は店内にATMを設置しているのに、入口のカギひとつだけで防犯上問題はないのか。問題がある。つまり、コンビニ業界は“緊急時に店を閉める”という対応に慣れていないのである。
4月14日、大きな揺れがあったあとに、商店街の様子を伝える報道があった。看板が倒れたり、窓ガラスが割れたり、店内の商品が崩れたりしているので、ほとんどの店は閉店していた。しかし、あるコンビニは電気をともして営業を続けていたのだ。どういった理由でその店は営業をしていたのか分からないが、ひょっとしたら防犯上“閉めたくても閉めることができない”といった事情があったのかもしれない。
とある情報番組で、シンクタンクでトップを務めていらっしゃる方がこのようなことを言っていた。「震災を繰り返すたびに、コンビニの再開スピードが速くなっている。コンビニはインフラとしてもはや欠かせない存在になっているし、いち早く再開することはとてもいいことだ」と。
筆者も早く再開できることはいいことだと思っているが、「店を開けたら開けたでトラブルが続出」「本当は閉めたいのに、閉めることができない」といった事情があることも忘れてはいけない。
著者プロフィール・川乃もりや:
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
関連記事
- 「そうか、そんな使い方があったのか」 コンビニの意外な利用法
あらゆる商品やサービスにおいて、世の中には「想定外の使い方」をする人がいる。今回は、筆者の経験談も交えながら、コンビニの意外な利用方法を紹介しよう。 - 災害取材を行うマスコミが、現地で非常識な行動をとる理由
関西テレビ放送の中継車が、被災地のガソリンスタンドで給油待ちをしていた車列に割り込んだことが発覚した。過去にも被災地でマスコミの非常識な行動が問題になっているが、なぜ彼らは“迷惑”なことをしてしまうのか。筆者の窪田氏によると……。 - なぜミニストップのソフトクリームは真似されないのか
某コンビニのPB商品がヒットすれば、競合他社が同じような商品を販売する――。コンビニは“真似の歴史”を刻んで、拡大してきたわけだが、真似されないモノもある。そのひとつが、ミニストップのソフトクリーム。その理由は……。 - もう振込用紙を持って来ないで! コンビニが「収納代行」を止めたい理由
「電気・水道・ガス・電話などの利用料金はコンビニで振り込んでいる」という人も多いだろう。しかしこの「収納代行」……とにかく面倒で、コンビニオーナーだけでなく本部も「止めたい」と思っているのではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.