“タダ乗り日本”にイラつくオバマは、安倍政権に何を要求してきたのか:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
米アトランティック誌が、オバマ大統領の外交に焦点を置いたインタビュー記事を掲載した。このインタビューでオバマは国際情勢のさまざまなトピックについて、これまでになく“ぶっちゃけ気味”に語っている。その中で興味深いのは……。
同盟国でも「タダ乗り」は許さない
オバマは米国の同盟国が自分たちの軍事的リソースを使うことなく、「タダ乗り」で、米国に安全保障的・人道的な助けを求めることに苛立ちを感じてきたと心情を吐露しているのだ。
この「タダ乗り行為」という発言については、他の同盟国が敏感に反応している。オバマが英国訪問前に訪れたサウジアラビアだ。かつて在米大使を務めたこともあるサウジの王子は、自国の英字新聞に寄稿して、サウジが米国にかなりの協力をしており、「タダ乗り」してはいないと主張した。
では同じく同盟関係にある日本はどうか。残念ながら、記事内には日本に触れた発言はない。
だが同盟国の英国に対する態度を見ると、軍事的に米国の庇護(ひご)を受けるなど関係性は対等とは言えない日本に対して、オバマはこれまでどんな要求をしてきたのだろうかと気になってしまう。オバマなら日本は「タダ乗り」だと見ているはずだし、英国への脅しのように、これまでも高圧的に何らかの要求をしてきているだろうと考えるのが自然だ。
日本では近年、言うまでもなく、安全保障分野における大きな変化がいくつも起きている。安全保障政策の転換となる安全保障関連法が2016年に施行され、防衛装備移転3原則も2014年に制定されている。また第2次安倍政権が発足してから、4年連続で防衛費は増額されている。
アトランティック誌の記事にはこんな記述もある。
オバマは大統領として、ほかの国々に、米国が率いるのを待つのではなく、自力で行動を起こすよう促す使命もあると説明した。オバマは、ジハード戦士のテロやロシアの冒険主義、また中国のいじめ行為から「開かれた国際的秩序」を守れるかどうかは、ほかの国々が米国とともに負担を共有する意思があるかにもよる、と考えている。
次期米国大統領になる候補者の指名争いが続いている米国で、候補者の1人である実業家ドナルド・トランプが最近、日米関係は不均衡だと発言して日本でも話題になった。トランプは2015年12月に、「日本が攻撃されれば、われわれは直ちに出動し、第3次世界大戦が始まるって分かっているのか? 米国が攻撃されても、日本は私たちを助ける必要はない」と語っている。「どういうわけか、あまりフェアではないようだ」
この考え方は、きっとオバマ大統領の考え方と近いのではないだろうか。要するに、同盟国だろうが「タダ乗り」は許さないし、中国などを相手に国際秩序を守るためには日本も負担をフェアに共有すべきだということだ。表立って声高に叫んで騒ぎ立てるか、水面下で高圧的に要求するかだけの違いのような気すらする。
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