減収減益のNEC、次の3年はどう動く?:16年3月期通期決算(2/2 ページ)
NECが2016年3月期通期の連結決算を発表。官公庁や公共向けおよび、通信事業者向け事業が不調で減収減益となった。同日発表した新たな中期経営計画では、3つの事業領域に注力し、ビジネスの成長エンジンを海外に求める姿勢を示している。
新中期経営計画を発表、成長ドライバーを海外へ求める
同日行われた記者会見では、同社代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの新野隆氏が「2018中期経営計画」を説明した。
同氏はまず「2015中期経営計画」を振り返り、「当期純利益はクリアするなど、利益体質は改善しているものの、市場への過度の期待と実行力不足により、売上の目標は未達となった。グローバルで通用するビジネスを作り上げるのには、やはり時間がかかる」と分析。
社会ソリューション事業へ注力するという方向性は明確かつ、間違っていないとし、今後は経営ポリシーとして、意思決定のスピード向上や全体最適の追求、そして事業責任の明確化を掲げ、グローバル環境で成長できる“柱”を作ると強調した。「4月1日付で新たにCGO(Chief Global Officer)という役職も作った。社外から有識者も入れながら、海外ビジネスの対応を進めていく」(新野氏)
「中期経営方針2018」では、2018年度の目標を売上高3兆円、営業利益1500億円、当期純利益850億円とした。2015年度における実績(IFRS基準)は、売上高が2兆8248億円、営業利益が914億円、当期純利益が759億円。海外売上比率については明言していないが、「27%程度を想定している」(新野氏)という。
中期経営方針では、営業利益率5%を目標とする「収益構造の立て直し」と、3つの注力事業を軸とした「成長軌道への回帰」の2つを大きなテーマとしている。収益構造の立て直しについては、不採算案件の整理をしつつ、業務改革や生産拠点の統合で計820億円の増益を見込んでいるとした。
売上の目標が現状の2%増とやや消極的に見えるが、これは国内における既存事業が縮小すると予想しているためだ。東京オリンピックに向けたインフラ整備、マイナンバ−、地方創生といった新ビジネスで国内の売上を維持しつつ、海外事業を伸ばすことで売上を伸ばす構えだ。
そのために同社は「セーフティ事業」「グローバルキャリア向けネットワーク事業」「リテール向けITサービス事業」の3領域に注力する。それぞれサイバーセキュリティ、SDN(TOMS)、店舗向けソリューションなど、これまで同社が注力し導入実績が出てきている分野といえる。2018年度にこの注力領域における海外売上高を、現在の倍以上となる約3000億円にするのが目標だ。
「これらの3領域はこれまでも注力してきたが、グローバルで戦うにはまだ不十分。これらの分野はIoTとAIという、磨いてきた技術が存分に生かせる事業といえる。技術レベルを高めたり、NECが作った価値を海外に届けるような企業とのM&Aも視野に入れつつ、全力を投じたい」(新野氏)
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