ローカル鉄道と地域を支える“寄付ツーリズム”のすすめ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
熊本地震における南阿蘇鉄道の被害が甚大だ。その支援のため、第三セクター鉄道4社が合同で寄付金を募る復興祈念切符を販売している。南阿蘇鉄道も義援金受け入れ口座を開設した。鉄道ファンとしては参加したい。寄付から始まる特別な思いが、大きな満足となる。
自己満足度いっぱいの寄付ツーリズム、やってみて
鉄道ではないけれど、Eスポーツライター時代にお世話になった犬飼博士(ひろし)氏が「スポーツタイムマシン」というプロジェクトを始めるときも、些少ながら送金した。このとき私は仕事がなくて金欠だった。それでも日本の文化のためになると思った。それから数年後、このプロジェクトは文化庁メディア芸術祭で優秀賞に選ばれた。その紹介ビデオの最後に私の名が出ている。文化に貢献したんだなあ、あのとき無理をして良かった(笑)。粋な配慮に感謝。今では大変な人気コンテンツになったそうで、いつか実物を体験したい。
豊かな暮らしではないから高額な寄付はできない。自分の好みと合致しなければ寄付はしない。それでも寄付ツーリズムは満足度が高い。自己満足だけど、さまざまな自己満足の中でもトップクラス。自己満足の王さまである。現地に名前が残ればうれしいし、人知れず寄付、というスタイルも自己満足としてはかなりカッコいい。この自己満足は他人に迷惑をかけない点でもよろしい。
寄付を募る人も寄付ツーリズムという考え方を知ってほしい。寄付する側もされる側も、ちょっとした気遣いで良い結果に結び付く。「お礼はできません」という正直な態度も好感は持てるけれど「できる限りの感謝を伝えたい」という気持ちがあれば、寄付する側はさらに気分が良くなり、財布のひもも緩むだろう。
大好きな鉄道を支援するという気持ちと、その鉄道に乗りたいと思う気持ち。どちらも寄付ツーリズムで盛り上げていきたい。
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