ふりかけの定番「ゆかり」の裏話:高井尚之が探るヒットの裏側(3/5 ページ)
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回はロングセラー商品、ふりかけ「ゆかり」の人気を読み解く。
学校給食への採用で人気メニューとなったが……
その一方で食品メーカーとして地道な活動も行う。ゆかりでは、かつて約20年かけて主原料である赤シソを品種改良したことがある。
「少し歴史的な話をすると、1970年の発売当初、ゆかりは売れゆき不振でした。それを打開したのは学校給食への採用です。子どもは白いご飯よりも、味がついていたり何かをふりかけたご飯のほうを好むので、昔も今も各地の米飯給食でゆかりは人気メニューとなっています。ところが売り上げが伸びるにつれて1979年から原料確保が困難になり、味の問題も起きました。お客さまから『変なニオイがする』という声が寄せられたのです」(三島氏)
同社で調べると、主原料の赤シソが荏胡麻(えごま)との自然交配によって変質し、刺激臭や不快臭が出ていた。この問題を解決するために各地を回り、生産農家と一緒に赤シソ栽培に取り組んだのだがうまくいかない。そこで思い切って在来種ではなく新たな品種を開発しようとしたのだ。
「この開発が難しくて試行錯誤の連続でした。最初はランの組織培養技術を使って、いい苗の大量増殖を試みたのですが、技術的にもコスト的にも難しくて断念。結局、従来の育種法に戻り、和歌山県で栽培される赤シソから優良な株を選んでタネを採って栽培。育った赤シソの品種にばらつきが出たので、またそこから優良な株を選んでタネを採って栽培――という作業を延々と繰り返しました。ようやく1999年に香りと色もよい高品質の赤シソが完成し、豊かな香りという思いを込めて『豊香』と名付けました」(同)
その後も品種改良を続け、現在の「ゆかり」には「豊香二号」を使っているという。三島食品は1949年に、三島氏の父である三島哲男氏が創業したが、昔からモノづくりへの意識は高かった。
「父は『いいものを作れ』『宣伝するカネがあるのなら、いい材料を買ってこい』が持論でした。今もその教えを受け継ぎ、例えばふりかけの『瀬戸風味』に使うかつお節は、鹿児島県・枕崎産でこだわりの製法で作ったものを当社の専用機械で削った削りたてを使います。焼きそばやお好み焼きのトッピングで使う商品『青のり』は徳島県の吉野川産や、高知県の四万十川産と海洋深層水で自社養殖したスジアオノリを使います。担当者が原材料の生産地に出向き、素材を吟味しているのです」(三島氏)
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