ふりかけの定番「ゆかり」の裏話:高井尚之が探るヒットの裏側(5/5 ページ)
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回はロングセラー商品、ふりかけ「ゆかり」の人気を読み解く。
「コメ離れ」の時代を見据えて
冒頭でも少し触れたが、食生活が多様になるにつれて日本人の主食であるコメの消費量は減っている。「ゆかり」が発売された1970年は、1人当たりの年間消費量が95.1キログラムだったのが、2013年には同56.9キログラムとなった(資料出所:農林水産省「食料需給表」など)。
一方で昔とは違い、女性が働くのが当たり前となり、男性が自宅で料理を作るのも普通となった。職場に手づくり弁当を持参する「弁当男子」への評価も高く、スーパーの店頭を定点観測すると、この7〜8年で男性客の姿が一気に増えた。そうした状況のなか、同社が力を入れるのは調味料やフレーバーとしての販路拡大だ。
「流通にも消費者にも、具体的な情報提供が喜ばれる時代です。例えば『ゆかり』を使った料理では、『ちりめん(ジャコ)赤シソおろし』というおつまみを紹介したり、『赤シソ風味のカルパッチョ』のような魚料理、とろろにゆかりをかけた『とろろ冷しゃぶうどん』のような麺類を紹介するなど、多様な利用方法を提案しています」(三島氏)
こうした使い方の提案が小売店の店頭で「多箇所展開」につながることもある。ふだんの店頭では、ふりかけや調味料の「定番」売場に置かれるが、上記のメニューでいえば、鮮魚売り場や麺売場の横に置かれるケースもあるのだ。
近年は海外でも「FURIKAKE」が注目されている。米国ではハワイ料理の「ポキ」(味つけをした魚介類の切り身)や「スパムおにぎり」に「海苔香味」が調味料で使われる例もある。また、ポップコーンやフライドポテトにも「ゆかり」や他のふりかけが使われることもあり、こちらはフレーバーとしての使われ方だ。
家庭向けの料理では、このところずっと「手早く・簡単」がキーワードだ。現在の単身世帯の増加、夫婦共働きや高齢化社会を考えると、今後も変わらないキーワードだろう。成熟商品である「ふりかけ」も、前述したように使い方の提案を続ければ、10年後や20年後の食生活にも欠かせない商品として存在感を発揮しそうだ。
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